[PR]

 財政規律のたがが外れてしまったと言うほかない。政府がきのう閣議決定した来年度当初予算案と、先週決めた今年度3次補正予算案である。

 来年度当初の総額は106・6兆円。コロナ対策に備えた予備費5兆円を除けば、今年度当初から1兆円ほど減る。総額が抑えられたように見えるのは、「15カ月予算」の考え方のもとで一体編成した今年度3次補正に、額がかさむ目玉事業をことごとく押し込んだからだ。3次補正を加えた実質的な来年度予算は、同じく15カ月予算だった今年度より16兆円も多い。

 感染防止対策や失業防止のための休業支援などは理解できる。問題は、コロナ禍と関係が薄い事業まで続々と、どさくさに紛れて盛り込んだことだ。

 5年間の国土強靱(きょうじん)化対策は、必要な工事を積み上げずに、与党の言い値で15兆円の総事業費を固めた。新設する大学の研究支援ファンドには、肝心の資金の運用方法を詰めないまま4・5兆円を投じる。

 コロナ下で「事務負担を軽減する」との理由で、これらの事業は金額や積算根拠を明示せずに各省から要求されていた。透明性の確保が課題だったが、公の場での議論がほとんどないまま決められてしまった。

 水面下の調整では、自民党の有力議員が「一律10万円の現金給付に10兆円超を使ったのに、この事業ができないのか」と迫る一幕もあったという。政府も与党も税金を扱っているという認識を失い、金銭感覚がまひしてしまったのではないか。

 東日本大震災の復興予算編成の際には、民主党政権の看板政策だった高速道路無料化が見直され、国家公務員の給与もカットされた。対照的に菅政権には、財源を捻出しようとする姿勢がみられない。

 訪日観光客の回復が見込めないのに、3次補正に「インバウンド復活に向けた基盤整備」として650億円計上した。人の移動の減少が予想されるなか、来年度当初では国の直轄道路を新増設する予算を増やした。

 あらゆる政策には、それによって恩恵を受ける人がいる。財源を気にしなければ、予算は野放図に膨らむばかりだ。

 来年度末の国債発行残高は1千兆円に迫る見通しだ。日本銀行による国債の大量購入という異例の政策に頼って、次世代に借金のツケを回し続けるのは、あまりに無責任である。

 25年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標は有名無実となってしまった。優先度の低い事業はやめ、必要な事業の財源をきちんと確保する。そんな基本を忘れていては、財政の健全化など望むべくもない。

こんなニュースも
こんなニュースも