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 ■共立女子大学×朝日新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大で世の中が変動する中、日本や国際社会ではどのようなリーダーが必要とされているのか。共立女子大学は、朝日新聞社と「朝日教育会議2020」を共催し、「これからの時代のリーダーシップとは」と題し、意見を交わした。

 【東京都千代田区の共立女子大学・共立講堂で11月23日に開催。インターネットでライブ動画配信された】

 ■基調講演 コロナ禍、共感力生かす女性首脳たち ジャーナリスト・池上彰さん

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、世界各国のリーダーたちを目にする機会が増えました。社会が不安を抱える時こそ、リーダーはその資質を問われます。

 日本では2013年当時、安倍内閣が「ITの利活用を2020年に向けて世界トップレベルにする」と宣言しました。ところが今年、実際はどうでしたか。医療機関が感染者の届け出をファクスで送る、緊急事態宣言下でもハンコをもらうために出社しなくてはならない――そんな問題が多数報じられました。コロナによってこれ以上の先送りができなくなったので、大急ぎでデジタル庁の立ち上げや「押印廃止」を決め、ようやくことが動き出しました。

 世界に目を向けると、最も反面教師となるのはアメリカのトランプ大統領です。彼は、自分を批判する人をツイッターで猛攻撃しますよね。政策について、あるいは大統領選の敗北を認めないことについて、「よくない」と思う人が周りにいても、攻撃の対象になるので口に出せません。リーダーが独善的で独裁的な力を持っていると、部下は自ら新しいことをしようとせず、常におうかがいを立てて「指示待ち」になってしまいます。

 中国では、習近平(シーチンピン)国家主席の独裁的な力が強まりつつあります。ところが中国は、武漢を封鎖し、コロナの感染拡大を抑え込みました。「独裁的なリーダーをもつ国ほど緊急事態に強く、民主主義国家は弱いのではないか」と、悲観的に見る人もいるかもしれません。しかし民主主義の国が、コロナの封じ込めに成功した例はあるのです。

 ニュージーランドのアーダーン首相は、37歳で就任した後、出産を経験したという大変若いリーダーです。彼女のコロナへの姿勢は他国のリーダーとは異なりました。トランプ氏やマクロン仏大統領は「コロナとの戦争」と表現しましたが、アーダーン首相は「戦争」とは言わなかった。約500万人の国民をチームと称し、コロナに対する団結と、互いを思いやる優しさを呼びかけました。夜は我が子を寝かしつけた後に自宅からメッセージを発信し、共感力が話題にもなりました。結果、感染者数を少なく抑えることに成功。10月の総選挙で、党首を務める労働党が圧勝し、首相の続投が決まりました。

 ドイツのメルケル首相のテレビ演説も見事でした。映画館や劇場といった文化を大切にする姿勢や、スーパーマーケットで働く人たちへの感謝を言葉で表したのです。メルケル首相は普段からスーパーに出掛け、自らかごを手に買い物する姿が報じられています。国民の生活を知っていたからこそ、出た言葉だったのでしょう。

 現代のリーダーが良き指導者であるために必要なのは、コミュニケーション力や共感力、生活力といったもの。そして、それらを自分の言葉で語ることのできる能力でしょう。プロンプター(原稿映写機)の文章をただ読み上げているリーダーとは、大きな違いがあるように感じます。

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 いけがみ・あきら 1950年生まれ、長野県出身。73年に慶応義塾大学を卒業後、NHK入局。報道局記者、番組キャスターなどを経て、2005年に退局。現在はフリージャーナリストとして、新聞、テレビ、雑誌などで幅広く活躍している。

 ■パネルディスカッション

 基調講演に続き、「これからの時代に求められるリーダーシップ」を考えるパネルディスカッションがあった。池上さん、東和エンジニアリングの新倉恵里子社長、共立女子大学の村上隆副学長、同ビジネス学部の森理宇子専任講師の4人が討論した。(進行は井原圭子・朝日新聞社教育コーディネーター)

    ◇

 ――共立女子大学では、学生全員がリーダーシップを学べるそうですね。

 村上 肩書がなくても、周囲を励まし、仲間と共に成功をめざす。それが、私たちが考えるリーダーシップです。自立した社会人になるには、自分の意見を持つことが必要です。そのために身につけるべき教養の中には、リーダーシップも含まれると考えています。

 森 現代が不安定で不透明な時代にある中、リーダーシップに対する考え方にも転換が起きています。以前はカリスマ性のあるリーダーが、ピラミッド型の階層の中でトップダウン式に集団をまとめていくものでした。しかし今は、積極的にチームに貢献する力があれば、複数の人が誰でもリーダーになり得る。互いの関係性の中で影響し合いながらチームを強め、結果を出していくことが最新のリーダーシップだと言えます。

 ――リーダーの定義が変わったのですね。

 新倉 当社の変遷に似ています。創業者の父の時代はやはりトップダウン型で、強い命令の下で会社は成長してきました。しかし、社会は大きく変化し始め、社長の指示を待つ従来のやり方ではいけないと感じた。私の代からは、社員が主体的に会社の未来を考えるような取り組みを進めています。部署を超えて会社の課題を共有し、アイデアを出しあったり、他社の人を交えて議論や対話をしたりしています。

 池上 高度経済成長期まではトップダウン型でもよかったのですが、コロナのように世の中がカオスの状態になると、1人のリーダーで対応できるわけがありません。一人ひとりが役割をもって働くことのできる組織と、人材の育成が必要です。

 ――コロナ禍で、新倉さんは経営者としてどんなことを心がけましたか。

 新倉 小中高校などで臨時休校が始まった3月2日、全社員に向けて「コロナウイルス拡散抑制指針」を出し、在宅勤務はもちろん、小学生以下の子どもを持つ社員には子育てを優先するよう伝えました。一番大切なのは社員自身の健康、そして家族、仕事は3番目だと。不安を抱えながら働くのはいいことではないし、社員だけでなく、彼らの家族とのつながりも重要だと考えたからです。幸い業績は悪化しておらず、今後も、こうして信頼関係を築くことのできた仲間と一緒に会社を良くしていきたいと思っています。

 ――リーダーシップに男女差はありません。「リーダーは男性」というステレオタイプを克服するには。

 森 ある調査によると「年代が上がるほど、女性リーダーの割合が下がる傾向にある」という結果が出ています。リーダーは男性でなければいけないという思い込みが根強く残っているからでしょう。

 リーダーシップは訓練によって習得することができます。「私なんて無理」という気持ちから離れることが重要でしょう。授業やゼミで小さな経験を積み重ねることで、「私にはできる」という自己効力感を高め、大きなリーダーシップにつなげることができます。

 ちなみに共立女子大学のクラスの学生たちに、「互いのリーダーシップをどのように感じるか」と尋ねたところ、最も多かったのは「頼もしい」でした。男性リーダーと結びつけられやすい言葉だと捉えていたので、私自身にも認識の偏りがあることを感じました。

 池上 女性リーダーを増やすためには、役職や候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」が有効でしょう。ヨーロッパの優れた女性指導者たちも、自然に現れたわけではなく、クオータ制を導入した結果です。ポストが人を育てるという側面もあります。

 ――視聴者からの質問です。共立女子大の学長・副学長が男性なのはなぜですか。

 村上 いましばらくお待ちください。早晩、女性執行部は誕生するだろうと思います。現在、本学の教員の男女比は男性が48%、女性が52%と、日本の国会や上場企業の取締役会と比べればはるかにいい数字です。ただ、女性教員は中堅・若手が多く、もう少しお時間をいただければ。私はそれまでの良き中継ぎでありたいと思っています。

 森 そのようなチャンスが出てきたときに、さっと名乗りをあげられるような女性を育て、支援したいです。

 ――森先生ご自身は。

 森 ここで「私はそんな……」というわけにもいかないですね。私自身も努力して、実力をつけていきたいと思います。

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 にいくら・えりこ 共立女子中高、短期大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)で第1子出産まで勤務。10年間の専業主婦を経て、夫が経営する会社再建にかかわる。1999年に実父が創業した東和エンジニアリングに入社。2016年から現職。

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 むらかみ・たかし 東京大学文学部卒業、同大学院博士課程単位取得満期退学。専門は日本倫理思想史。日本倫理学会評議員、大学基準協会評価委員、文部科学省教科書審議委員を務める。共立女子大学文芸学部長を経て、2018年から現職。

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 もり・りうこ 東京女子大学文理学部卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程修了。住友金属工業(現日本製鉄)人事部で人材開発業務に従事した後、外資系流通業の人事・総務部マネジャーなどに携わる。2020年から現職。

 ■メンバー誰もが発揮すべきもの 会議を終えて

 前回に続き、リーダーシップをテーマに開催した共立女子大学。コロナ禍のもと、首相交代や米大統領選もあり、多様なリーダー像を目にする機会に恵まれた私たちにとってタイムリーなフォーラムとなった。

 学生全員が副専攻でリーダーシップを学ぶという共立のカリキュラムはユニークだが、リーダーシップは組織のトップだけのものではなくメンバー全員が発揮すべきものだという、リーダー論のパラダイムシフトも背景にある。

 共立OGで、ワンマン社長だった父とは逆を行く手法で業績を伸ばした新倉恵里子さんは、そうした新しいリーダーシップを体現する経営者だ。新倉さんや、専任講師の森理宇子さんの話を聞きながら、性別役割分担意識から自由な女子大学はリーダーシップを養うのに向いているとの思いを強くした。

 池上彰さんの基調講演はコロナで世界の女性リーダーが存在感を示したことを強調した。日本は女性リーダー後進国。社会を覆う閉塞(へいそく)感の一因もそこにある。女性が当たり前にリーダーシップを学び、発揮できる場がもっと広がればと思う。(井原圭子)

 <共立女子大学> 1886年、女性が専門的な知識と高度な技能を習得し、自主性や社会的自立を育むために創立された「共立女子職業学校」が前身。文理両領域の高い専門性を兼ね備えた都心の女子総合大学として発展してきた。今春新設されたビジネス学部をはじめ、全学的にリーダーシップ教育を行っている。

 ■朝日教育会議2020

 10の大学と朝日新聞社が協力し、様々な社会的課題について考える連続フォーラムです。「教育の力で未来を切りひらく」をテーマに、来場者や読者と課題を共有し、解決策を模索します。これまでに開催したフォーラムの情報や、内容をまとめた記事については、特設サイト(https://aef.asahi.com/2020/別ウインドウで開きます)をご覧ください。すべてのフォーラムで、インターネットによるライブ動画配信を行います。

 共催大学は次の通りです。共立女子大学、成蹊大学、拓殖大学、千葉工業大学、東海大学、東京理科大学、二松学舎大学、法政大学、立正大学、早稲田大学(50音順)

 ※本紙面は、ライブ動画配信をもとに再構成しました。

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