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 建設資材中のアスベスト(石綿)を吸って肺がんなどになった建設労働者らが起こした裁判で、国に賠償を命じた東京高裁の判断が最高裁で確定した。

 規制を怠って被害を拡大させたのみならず、控訴・上告を繰り返して訴訟を長引かせた国の責任は重い。田村憲久厚生労働相はきょう被害者たちと面談する。これまでの対応を謝罪し、救済策の充実に一日も早く乗りださなければならない。

 耐火性や断熱性の高い石綿は、1950年代から吹き付け材や建材などに広く使われてきた。関連する病気での労災認定は2005年以降、年1千人前後にのぼる。呼吸器を侵されて日常生活が困難になり、苦しんだまま亡くなる人も多い。

 国の責任を認めた判決は高裁レベルですでに六つ積み重ねられているが、国が規制に乗りだすべきだった時期や期間、内容などに違いがあった。

 今回確定した判断は、遅くとも75年10月には防じんマスクの着用の義務づけなどを法令で定めなければならなかったなどと述べ、責任期間を広く認めた。また、個人事業主で労働法の保護対象ではないと国が主張した「一人親方」についても、適切な規制をしていれば、同じ職場で働いていたこうした人々も被害を受けることはなかったとして、救済の網を広げた。

 健康を害した人たちには労災保険、もしくは06年制定の石綿救済法に基づいて医療費や療養手当(月額約10万円)、遺族への弔慰金などが支給されるが、いずれも国の責任は前提となっておらず、長年の苦痛に対する慰謝料も考慮されていない。最高裁の決定を踏まえた見直しが当然求められよう。

 石綿生産工場の元労働者の被害についても、国に責任があるとの司法判断が確定している。提訴すれば国が和解に応じて賠償する仕組みが設けられたが、形式的とはいえ裁判を起こす負担の重さを指摘する声も強い。被害者の立場や属性にかかわらず、簡易・迅速な救済システムが求められる。

 一連の訴訟では、石綿製品を製造・販売して利益をあげた企業の責任の有無がまだ確定していない。最高裁が来年にも結論を示すとみられるが、手続きの進行具合を見ると、責任を否定した高裁の判断が何らかの形で見直される可能性がある。

 判決の中には、製造期間や製品の市場占有率から各企業の責任割合を推定して賠償を命じたものもある。被害者・遺族は、国と企業が負担して新たな補償基金を創設するように求めている。そうした提案にも耳を傾け、国が主導して実効ある枠組みづくりに動くべきだ。

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