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 「桜を見る会」の前夜祭の費用を安倍前首相側が補填(ほてん)していた問題で、東京地検は安倍氏を不起訴とし、公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴した。

 首相在任時の政治活動をめぐって、側近、それも国費が支給される秘書が刑事責任を問われる由々しき事態だ。似たような事態を受けて、役職を退いたり議員バッジを外したりした政治家も少なくない。安倍氏の政治的・道義的責任は極めて重い。

 特捜部は安倍氏からも事情を聴いたが、補填に関して指示や同意を与えるなどした証拠を見いだせず、罪に問うことはできないと判断したという。

 だがこの説明に納得できない国民は多いのではないか。

 不記載と認定された収支報告書のうち19年分は、補填の疑いが国会で問題になった後に作成・提出された。疑惑を指摘された以上、政治家たるもの、関係者に詳細を確認し、自ら書類を点検するのが当然の務めだ。

 安倍氏がそうしなかったとすれば、国会、そして国民をとことん愚弄(ぐろう)していたことになる。訴追するか否かは、金額の多寡やこれまでの処分例との均衡など様々な要素がかかわってくるとはいえ、少なくともこの年分に関しては、異なる対応も考えられたのではないか。

 選挙区内での寄付を禁じる公職選挙法に違反するとの告発も出ていたが、特捜部は安倍氏、秘書ともに不起訴とした。参加者たちに会費を上回る利益を受けた認識がなく、適用は難しいと判断したという。

 だが、税金で催される「桜を見る会」への招待とあわせ、安倍事務所につてがあれば、何らかの恩恵にあずかれることが明らかになり、森友・加計問題が引き起こした政治不信を一層深めた。この罪は大きい。

 検察が公設秘書を略式起訴にとどめ、簡裁がただちに罰金100万円の命令を出したことにも、釈然としない思いを抱く。その立場や社会的関心の大きさを考えれば、公開の法廷で審理してしかるべきだった。

 なぜ収支を記載しなかったのか。安倍氏が本当に知らなかったとすれば、問題発覚後も報告しなかった理由は何か。補填分の資金をいかにして捻出し、事務所のコンプライアンス体制はどうなっていたのか――。国民が当事者の口から話を聞く機会は失われてしまった。

 不起訴を受けて安倍氏は会見したが、事務所の資金管理に公私の別はついていたのか、新たな疑念を生むような発言もあった。そうした問題も含め、きょうの国会でどこまで国民に誠実に向き合った説明をするか。その言動に多くの目が注がれる。

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