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 外で思い切り体を動かし、友達と楽しく遊ぶことは、子どもの心や体の健康や成長のために大切です。新型コロナウイルスの第3波の感染が拡大する中で、どんなことに気をつけて運動をすればいいのでしょうか。日常生活の中で体を動かすヒントや感染対策への考え方について、子どもも大人も知りたいことを聞いてみました。

 ■苦手でも運動好きな子に 元NHK・Eテレの体操のお兄さん、小林よしひささん

 新型コロナウイルスの影響で公園などで初めて会う子ども同士の触れ合いが少なくなっています。感染予防はもちろん大事ですが、互いを危険視してしまっている気がします。

 遊びの要素の一つにコミュニケーションがあります。ふれあい、笑い、大声をかけ合う。そこに制限がかかると遊びのいい部分が半減してしまうのは事実としてあります。アフターコロナで、どんどん遊びの自由さ、場所が減ってしまうのが心配です。

 子どもはそもそも体を動かすことが好きなはずです。小さい時、何も言わなくても、走り回ったり、跳び回ったりしますよね。心や体の中にそれが楽しいという本能があるからだと思うんです。

 でも、年齢が上がると、運動好きとそうじゃない子で二極化してしまう。体を動かすとスッキリする、健康でいられる、という知識や経験があれば、運動が苦手でも運動する子になると思っています。だから、私はそういう子たちを大切にして、丁寧に接したい。自我が芽生える3歳のころ、スポーツというより、体を動かす遊びをすることが大切になります。

 スポーツとして、能力を競い合うこともあっていいと思います。でも、例えば1千メートルを10分で走る時、楽々ゴールする人と、頑張ってやっとゴールできた人では意味合いが違います。速さだけでなく、努力の過程も大事なはずなんです。そんな目線の運動を、世間や親、子どもたちがもっと理解すると、運動が苦手でも運動が好きな子がでてくるんじゃないかな、と思っています。

 複数の子どもたちで遊ぶと、会話の中から新しい遊びが生まれることがあります。(想像力や好奇心などの)非認知能力が高まっていくのです。数字や距離を考え、鬼の動きを考える。遊びはすべて勉強につながります。そうやって何事も遊びと捉えられるようになったら、どれだけ楽しいか。遊びって本当に大事なんです。

 (聞き手・野村周平)

 ■楽しさ優先、毎月違う競技 東京・八王子のスポーツクラブ

 東京都八王子市を拠点とする地域密着型のスポーツクラブ・アローレ八王子では、幼児や小学生を対象に、10月から新しい試みが始まっています。「スポーツ探検隊」と名付けられたプログラムです。

 月ごとに、楽しむ競技を替えていきます。10月はバスケットボール、11月はフラッグフットボール、12月はテニスになりました。そして、1月はラクロス、2月はサッカー、3月は野球を予定しています。

 幼い頃から一つの競技に打ち込むことが美徳ととらえられがちな日本では、先進的な取り組みといえるでしょう。季節によって選手が競技を掛け持ちする米国のシーズン制をヒントにしています。

 「いろいろな競技に親しめば、様々な体の部位を使い、自然と基礎的な運動能力が養われます。そして、スポーツの楽しさを優先に考えるので、子どもたちが生涯にわたってスポーツを楽しむ素地にもつながります」。クラブを運営するNPO法人代表理事の紙本諭さんはそう考えます。

 もともとアローレ八王子では、サッカー、バスケ、チアダンスが子どものプログラムの3本柱でした。それが、緊急事態宣言を機に1割ほどの会員が退会。紙本さんはその子どもたちが体を動かせているかどうか、心配になりました。そこで、かねて温めてきたこのプログラムの導入を早めたそうです。純粋な外遊びととらえてもらえ、気軽に参加してもらえるのではないかと考えたからです。実際、30人以上の申し込みがあり、「ニーズが確認できた」と手応えを感じています。

 (編集委員・中小路徹)

 ■楽しめる環境、親が作ろう 元五輪代表、乳幼児教育・ヘルスケアが専門 勅使川原(てしがわら)郁恵さん

 自粛期間中は子どもとの時間が増え、今まで以上に一緒に運動遊びをする時間を大切にしていました。私が動いて遊ばせていたので、2人の子どもは太ったり、運動不足になったりしたことはありませんでした。でも仕事で忙しかったり、遊ばせることが苦手だったりする親御さんから「自粛中に太った」という話は聞きました。遊びに制限がかかる中、親の関わり方は重要です。

 子どもの頃にたくさん体を動かすには、親がどれだけ楽しい環境を作ってあげられるかが大切だと思います。専門競技に進むのは中学生ごろからでもいい。色々な運動や遊びを経験することで、幼児期に身につきやすいと言われる神経系も成長していきます。私は色々な遊びをしながら、「子どもの好き」を見つけられる環境作りをしています。

 公園でもスポーツ教室でも、スマートフォンをずっと見ている親御さんの姿をよく見ます。私はスポーツ教室で先生が子どもたちに何を教えているのか、興味津々で見ます。そうすると家庭で会話が生まれて、一緒に運動できる。そういう風に子どもに寄り添ってあげることは大事だなと思っています。

 冬季五輪3大会に出場したこともあり、引退後は指導者に誘われました。でも私は、人間形成の基礎を培う子どもたちに運動の楽しさを伝えたかった。乳幼児期の環境はすごく大事です。運動も食べものも、何かに苦手意識をもったままの大人になってほしくないんです。

 私は子どもの頃、スケートが好きでただただスケート場に行きたかった。それが結果として五輪につながりました。やらされるのではなく、自分からやりたいと思ってやる子どもたちが増えたらいい。そう思って、活動しています。

 (聞き手・野村周平)

 ■原発事故後に似た警戒感 福島大教授・川本和久さん

 新型コロナウイルスが子どもたちの外遊びや運動に与えた影響は、あの時、福島で起きたことが、日本中で起こったと思っています。2011年3月に起きた福島第一原発事故の後のことです。どちらも、屋外での活動への警戒感が高まりました。

 一方で原発事故とコロナ禍の違いも感じています。今回は学校体育や部活動で工夫して対応できました。原発事故の時は、工夫しようがありませんでした。

 原発事故後の11年7月、福島市で開かれた小学生の陸上大会では軒並み記録が落ちました。例えば、小学5年女子約70人の100メートル走。前年までの10年間は平均15秒30前後だったのが、11年は15秒61に。距離にして約2メートルも差がつきました。

 原発事故の後、子どもたちの屋外活動は制限されました。体育の授業も外でできず、放射線への不安から長袖にマスク姿でした。長引く避難生活も体力不足に関係しているようでした。

 今年は、全体的なタイムは落ちている一方、中高生のトップの選手のタイムは落ちていませんでした。子どもたちの運動したいという欲求に応えるため、指導者や先生がスポーツする環境を作ろうと努力しているからだと思います。

 私が福島県で運営する陸上クラブでは、9月から記録会を開いています。多くの子どもたちが100メートルを1本走り、幅跳びを3回跳びます。大人を含めた参加者の半数以上が、東京や千葉など県外からでした。これは今までなかったことです。子どもたちはみな、コロナ下でスポーツができることに、感謝の言葉を口にしてくれます。

 (聞き手・木村健一)

 ■こわがらずに学校にいこう、感染した友だち避けないで 国立病院機構仙台医療センター・ウイルスセンター長、西村秀一さん

 小学生が、外で元気に走り回って遊んでいるときの感染リスクはものすごく低いです。付き添う大人からの感染に注意すればよく、それも、大人がマスクをすれば十分。室内では、換気をよくし、密にならないようにしてください。

 校庭が封鎖されたという声もありましたが、理解できません。子どもはむしろ、校庭で思いっきり遊ばせてあげるべきです。大空の下での感染リスクは、子どもたちが極端に密集しない限り、ほぼ皆無だと思います。ただ、子どもたちは、取っ組み合いに近いことをやりますから、そういったことはやらないよう大人が教えればいいかもしれません。

 朝日小学生新聞の朝小リポーターからの疑問に答えていきましょう。

 「マスクを外さないようにしている」という声がありました。マスクをするべきかどうか、理屈で知り、自分で判断する力を身に付けてください。基本的に、人が密集する場面はしたほうがいいですが、そうでなければ外しても大丈夫です。

 「バスケットや鬼ごっこができる方法は」という声もありますが、バスケのボールでの感染は考えられません。ボールの消毒は必要ない。心配なら終わって手を洗えば十分。屋外での鬼ごっこはほとんど問題ないですが、室内では換気が大事です。

 そのほか、私が助言できることは次の通りです。

▼こわがらずに学校にいこう。子どもで症状が悪化する例はすごく少ないんだ

▼もし熱が出たり、せきが出たり、食べても味がしなかったりしたら、すぐに大人に知らせて

▼おじいちゃんやおばあちゃんのところに行くときは、マスクをして。だるいときやせきが出るときは行かないこと

▼もし、友だちや、友だちのおうちの人にかかった人がいることがわかっても、その友だちを、避けたり、からかったり、いじめたりしないで

▼ウイルスは感染した人がもっているだけで、外や外の空気にはいないということを覚えておいて。部屋に閉じこもらないで外で思いっきり遊んでね

▼怖がりすぎの大人が変なことをやっていることをよく見て、覚えておくこと

 (聞き手・後藤太輔)

 ◇11月上旬、運動を再開した認定こども園に取材に行きました。子供たちは半袖でキャッ、キャッと走り回り、飛んだり跳ねたり、転んだり――。「やはり子供は風の子」だと思いました。

 ただ、この言葉も死語に近づいているのでしょうか。幼児らへの巡回サッカー指導を続けてきた指導者に聞くと、「コロナ以前に、ここ数年は運動不足の子が増えていた。外遊びをしていないのだろう」。走るフォームを見ると、手足が連動していないから、すぐに分かるそうです。

 今の時代、小さな子が外を走り回るには、周囲の努力や環境の条件が必要です。そのために大人や地域、行政が何ができるか。感染症の収束だけでは、この問題の解決には至らないようです。(塩谷耕吾)

 ◇オピニオン面は29日から休載し、1月1日に再開します。次回のフォーラムは17日に「夫婦の姓、どう考えますか?」を掲載します。アンケートをhttps://www.asahi.com/opinion/forum/で実施中です。

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