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 めざすべき脱炭素社会の姿を的確に描き、正しい道筋を進んでいけるかが問われる。

 2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするため、政府が「グリーン成長戦略」をまとめた。洋上風力発電や水素産業など14分野をあげ、重点的に取り組む項目や数値目標を提示している。

 国が具体的な見通しを示して高い目標を掲げ、企業などが研究開発に挑戦しやすい環境をつくる、という触れ込みだ。

 「50年に実質ゼロ」の実現には、いまある技術を総動員するだけでなく、技術革新も欠かせない。このため今回の成長戦略は、幅広い分野で研究開発を促すことを狙っている。

 電力の脱炭素化を進め、それを前提に産業・家庭を電化し、水素も積極的に活用する。市場メカニズムを使って社会や産業の変化を促すよう、炭素税や排出量取引のようなカーボンプライシングにも取り組む……。示された方針や方策には、うなずける点も多い。

 ただ、約2カ月という短期間で取りまとめたせいか、戦略が念頭に置く30年後の社会は現状の延長にとどまり、目標としては物足りない。

 たとえば、再生可能エネルギーについて「最大限の導入をはかる」と強調しながら、「電力の100%をまかなうのは困難だ」とし、目安として「50~60%」をあげた。これは欧州の主要国が30年にめざしている水準に過ぎない。

 また、ガソリンを使うハイブリッド車を脱炭素の手段に含めるのは理屈に合わないし、二酸化炭素の回収に余計なコストをかけてまで火力発電を温存するのも合理性に欠ける。

 原子力の将来に関する見立ても大いに疑問だ。成長戦略は「可能な限り原発への依存度を下げる」とする一方、「最大限に活用する」とも明記した。古い原発が引退していくなか、30年後に原発に頼れるのか。政府は次世代炉の開発をめざす考えだが、「原発ゼロ」を想定するのがむしろ現実的だろう。

 このように狙いの腰が定まらないままでは、変革を実現できるのか心もとない。政府は「50年に実質ゼロ」の意味を改めて考え、めざす理想を描き直してもらいたい。

 30年の間には重点分野を取捨選択し、研究開発の方向性を修正する必要も出てくるだろう。「50年実質ゼロ」への戦略を継続的に統括できるよう、政府内の体制を整えておくべきだ。

 ビジネスや暮らしを一変させる脱炭素化を進めるには、社会全体の合意が求められる。政府は国民や企業の声に、耳を傾けることを忘れてはならない。

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