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 コロナ禍は囲碁界も直撃し、前代未聞の2カ月に及ぶ対局中断に見舞われた。往時の勢いに陰りが見えていた井山裕太は、再開の喜びを力に変えた。芝野虎丸との史上初の三冠同士の頂上決戦を制し、3度目の大三冠に。ポスト井山をうかがう芝野に一力遼が追いつき、二冠で並んだ。天下の情勢は、三つどもえの争いとなっている。

 囲碁界はさながら三国志の様相を見せている。たとえて言えば、最強国の「魏」は井山だ。台頭する新興国に押されながら、ここぞの戦いでねじ伏せる曹操のような“魔王”ぶりを発揮した。

 年初の立ち上がりは不安定だった。前年に十段、王座を失い三冠で迎えた棋聖戦で、挑戦者の河野臨に3連勝しながらも連敗。かろうじて第6局で8連覇を決めた。

 一方、前年に史上最年少名人となった芝野は、魏に代わって天下取りをうかがう「呉」のように版図を広げた。名人獲得の翌月に井山から王座を奪い、今年に入っても十段挑戦者決定戦で井山を下した。本因坊戦リーグも制し、井山の本丸、本因坊戦の挑戦者に名乗りを上げた。コロナ禍による対局中断は、その翌日の4月7日に発表された。

 6月1日に対局再開。彼我の勢いの差から覇者交代は目前と思われたが、流れは逆転していた。芝野は十段を奪い、三冠となって冠数で井山に並んだが、本因坊戦はスコア、内容ともに完敗だった。井山は歴代2位タイの9連覇を達成。七冠独占が崩れた一昨年から本格化させたAI研究が結実した。

 復活の井山は8月、名人戦リーグで全勝優勝。今度は芝野の本丸、名人戦の挑戦者になり、本因坊戦の勢いそのままに名人を奪取。棋聖、本因坊と合わせて自身3度目の「大三冠」に返り咲いた。

 三国志では、魏と呉の死闘の間に「蜀」が興り、天下取りレースに加わった。一力も井山と芝野の頂上決戦の間に碁聖を奪い、初の七大タイトルを獲得。そして年末、対井山6度目の七大タイトル挑戦で初めてシリーズを制し、井山の独走を止めて天元を獲得した。世界戦でも劣勢の日本勢のなかでひとり気を吐き、「応氏杯」で4強入り。年明けに中国の謝科八段との準決勝三番勝負に臨む。

 井山を軸に芝野、一力が加わった七大タイトル戦の攻防とは別に、11月、歴史に刻まれるビッグニュースが飛び込んできた。若手棋戦「若鯉(わかごい)戦」で、藤沢里菜が男女競合の公式戦で史上初の女性覇者となった。

 芝野21歳、藤沢22歳、一力23歳。若手の活躍は、新時代の到来を強く印象づけた。

 (大出公二)

 <訂正して、おわびします>

 ▼12月28日付囲碁将棋面「覇権争い さながら三国志」の記事で、囲碁の井山裕太本因坊が「歴代最多タイの9連覇を達成」とあるのは、「歴代2位タイの9連覇を達成」の誤りでした。歴代最多は趙治勲二十五世本因坊の10連覇でした。

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