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 ■成蹊大×朝日新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大で、わたしたちの暮らしは大きな変化を余儀なくされている。成蹊大学は「アフターコロナ~日本はどう変わるのか~」をテーマに、朝日新聞社と大型教育フォーラム「朝日教育会議2020」を共催し、コロナ後の社会を展望した。

 【昨年11月28日に開催。インターネットでライブ動画配信された】

 ■基調講演 エコロジー・資源・健康…チャンス生かせ 三菱総合研究所理事長、元東大総長・小宮山宏さん

 世の中の大きな変化の流れは、既にコロナ禍以前からありました。現在と20世紀初めを比べると、GDP(国内総生産)や平均寿命、人口は何倍にもなりました。今は人類史の転換期であり、コロナがそれを加速させていると言えます。

 これからめざすべき社会像を「プラチナ社会」と命名し、地球環境問題や超高齢化を解決する社会について提言する運動をしています。エコロジー、資源、雇用などがプラチナ社会の必要条件で、そこにビジネスが加われば強力な動きになります。

 エコロジーの事例を紹介します。静岡県三島市の源兵衛川周辺の例です。昭和30年代には洗濯ができた豊かな川が、高度経済成長期にどぶ川になってしまった。たった一人の行政職員が清掃を始め、NPOや企業が追随し、30年かけて自然環境が回復しました。私は3年前にホタルの群舞を見ました。遊歩道があって観光客が二十数年で4倍に増えたそうです。環境を良くしてビジネスにつなげた好例だと思います。

 資源やエネルギーの観点で考えてみます。例えば、近代林業を確立して、国土の3分の2を覆う山林をきちんと維持することは大きなビジネスチャンスです。循環型社会をつくる極めて重要な資源ですから。

 また、日本では自動車が毎年約500万台廃棄されますが、これらは回収してリサイクルされています。鉄の量が飽和状態にあるため、資源として再利用できる「都市鉱山」が十分な量あるといえます。

 エネルギーで安いのは太陽光と風力発電で、どんどん世界で増えている。「日本には資源がない」と言われてきましたが、金属資源は都市鉱山に、化石資源は再生可能エネルギーに置き換わり、状況はがらりと変わります。資源やエネルギーを自給できる社会になれば、地方には50兆円規模のビジネスが生まれる可能性があると言われています。

 地球だけでなく、人間も持続しなければなりません。すなわち健康の問題です。日本で最もクオリティーの高い健康データは弘前大学にあります。地域住民の健康診断で1人当たり約3千項目のデータを毎年1千人以上から取っており、予防医療に反映している。もう15年ほどになります。このデータは素晴らしく、例えばその人が3年後に糖尿病を発症するかどうか、極めて高い確率で予測できます。日本各地で同じ測定をし始め、ビッグデータはさらに向上しています。巨大な健康産業のプラットフォームを日本でつくる好機なのです。

 つまり、自然共生、資源自給、生涯自立と、いずれも日本には希望があると思っています。チャンスはあるのに、これまで日本は動こうとしなかった。それが今、コロナ禍によって動きそうになっています。動く以外にありません。

 教育の在り方も変わっていくでしょう。鹿児島・種子島をプラチナ社会にしようと、10年ほど前から各地の大学の最先端の「知」を持ち込んでいます。学生がキープレーヤーになり、地元の子供たちや市民と一緒にグループワークやシンポジウムをしています。皆が学び合い、教え合いながら前に進む。だれが生徒か先生か。そんな「めだかの学校」をこれからの標準にしていきたいのです。

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 こみやま・ひろし 1944年生まれ。72年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東大工学部長などを経て、2005年から総長。09年に総長退任後、同年4月から現職。専門は地球環境工学など。

 ■パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは、小宮山さん、富士通シニアエバンジェリストの松本国一さん、経団連産業技術本部統括主幹の小川尚子さん、成蹊大学の北川浩学長の4人が登壇し、コロナ後の日本の未来について意見交換した。

 (進行は竹下隆一郎・ハフポスト日本版編集長)

     ◇

 ――コロナという人類共通の課題を抱えている私たちは、本当に変わることができるのでしょうか。

 松本 中国ではコロナ禍で、オフィスワーカーの6割にあたる2・5億人が完全在宅勤務に切り替えました。産業構造が変わるさまざまなデジタルの取り組みが始まり、自らネット出演するライブ販売で月1・6億円を稼ぐバイヤーがいたり、ライブ配信の旅行に1回500万人が参加したりすることが実際に起こっています。中国はチャレンジする土壌ができ、「とりあえずやってみよう」というアジャイル型を進化の糧にしています。

 これに対し日本はウォーターフォール型、つまり成功プランをしっかりと計画して数年単位で実行する方法が当たり前になっています。失敗の少ない安定したビジネスを作り出せるメリットがある一方で、経済回復の遅れにもつながっています。

 小川 変化のカギは、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル化による変革)であり、それによってより良い社会と課題解決につなげる「Society5・0」と呼ぶものです。ただ、このことは企業経営者はみんな分かっているのに、なぜか進まない。

 企業の幹部候補生たちとの研修会で、「ペインポイント(課題)が見つからない」という発言を聞き、驚いたことがあります。普通に生活していると、子どもの学校関係の書類の山と格闘するとか、1分1秒を争う仕事と家庭の両立をどうしようかとか、ペインポイントだらけなのですが……。仕事だけを考えてきた人には見えなくなっている。課題を見つけるにはやはり多様な視点が必要。それが社会や企業の突破口になるのかなと考えています。

 北川 学生の中にも「社会に課題なんてない。今がとってもいい」という人はいます。課題を見つける力には、さまざまなチャレンジが必要なのでしょう。働き方改革で兼業・副業が広がって、例えば、銀行で働き、メーカーの経理をし、農業をするなどと、3分の1ずつ別々の職業につけるとしたら、学生の感覚は圧倒的に変わるでしょう。人生設計そのものが一変しますからね。

 ――やるべき方向が見えているのに進まない。そんな「立ち尽くす日本」はなぜ起きているのでしょう。

 小宮山 重要な問題です。大学で、10カ国ほどを比較しながらきちんと事例研究をしてほしい。それがいま必要な日本論じゃないかと、実は思っています。

 北川 最近10年くらいの日本社会に、減点主義で人を評価することが急激に染みついてきた。失敗するとたたかれる、だったら何もしない方がいい――となる。失敗への不寛容がどこから生じてきたのか、問題意識があります。

 小川 立ち尽くしているのは、ずばり、高度成長時代の成功体験が大きすぎたからです。Society3・0にあたる工業社会の時代にできた、組織や人事や働き方があまりにもうまくいき、その後、4・0の情報社会にあたる平成の30年間、変わらないまま地盤沈下していった。現在、決定をする立場につく人々には、3・0の成功体験が残っている層のボリュームが大きく、なかなか変えられないのかもしれません。

 ――日本は高齢化社会。働き方改革で70代まで働く人も多くなる中、数が少ない若者にはイスがなかなか空かないのでは。

 小宮山 若い人が同じところで働き続けようと思わなくなった一方、定年退職後にもう一仕事しようと意欲を持つ人もいます。シニアと若い人のコンビネーションがうまくできればいいのですが。

 ――世代間対立で分断されるのはおかしいですからね。では、立ち尽くす日本を変える人材とは。

 小川 デジタルの才能は現在は求められていますが、20年後に必要なスキルはまた変わってくるでしょう。大事なのは社会の変化に対応できる、その変化を楽しんで一生学び続けられる能力かもしれません。

 松本 さまざまな世代が、能力を生かして社会を変えていく時代です。年齢や性別は意識せず、自分の能力はどこにあるのか、ないとしたら、大学で学び直すことも重要です。

 北川 「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などのゲームでは、何かにたけたキャラクターたちがチームを組み、敵に立ち向かう。個性とコミュニケーション力が未来の基本になるのかなと、学生たちとよく話しています。

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 まつもと・くにかず 1991年、富士通に入社。情報・モバイルの14部門37部署で設計から企画、営業支援まで様々な業務に従事。現在、多彩な業務経験を生かし、「働き方改革」を広めるエバンジェリストとして活躍している。

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 おがわ・なおこ 1994年東京大学卒、経済団体連合会(現日本経済団体連合会)事務局入局。国際本部などを経て、2003~06年外務省出向、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部勤務。19年から現職。

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 きたがわ・ひろし 1960年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程を経て、89年成蹊大学経済学部専任講師。同大教授、キャリア支援センター所長、経済学部長を歴任。2016年から現職。専門は経済学。

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 たけした・りゅういちろう 慶応義塾大学法学部卒。朝日新聞記者などを経て2016年から現職。

 ■求められるのは変化を楽しむ力 会議を終えて

 コロナ後の世の中を前に進めるには、どのような人材が求められるのか。パネルディスカッションも終盤。こうした話題を中心に議論が進むと、登壇者らの弁はいよいよ熱を帯びた。

 なかでも、北川浩学長が話したことは印象的だった。人工知能やロボットが社会に溶け込む時代。「異業種や多様なものがコラボし、チームで何かをやることが普通になる」と展望し、チームに選ばれ活躍するのは、自分の個性を主張できる人だと話した。

 北川学長は学生たちに説明するとき、ロールプレイングゲームを引き合いに出すそうだ。「ラスボスを倒しに行くとき、回復呪文や打撃系の攻撃など、何かにたけたキャラクターたちでチームを組みませんか」

 個性を磨き、社会を変えてほしいという若い世代への強い期待は、登壇者に共通していた。小川尚子さんは、人材に求められることは時代によって変わると考え、「大事なのは変化への対応力。もっと言えば変化を楽しみ、一生学び続けられる力ではないか」と若者たちにエールを送った。

 これはまさに、コロナ禍に直面するあらゆる世代に求められている力ではないかと、強く感じた。(教育総合本部・諸星晃一)

 <成蹊大学> 教育者・中村春二が1912年に創立した成蹊実務学校を源流とする。49年、それまでの7年制高等学校を基に成蹊大学を開設。小、中・高、大学、大学院が東京・吉祥寺の一つのキャンパスにある。2020年4月、それまでの経済学部を改組し、新しい経済学部(経済数理学科・現代経済学科)、経営学部(総合経営学科)を開設した。

 ■朝日教育会議2020

 10の大学と朝日新聞社が協力し、様々な社会的課題について考える連続フォーラムです。「教育の力で未来を切りひらく」をテーマに、来場者や読者と課題を共有し、解決策を模索します。これまでに開催したフォーラムの情報や、内容をまとめた記事については、特設サイト(https://aef.asahi.com/2020/別ウインドウで開きます)をご覧ください。すべてのフォーラムで、インターネットによるライブ動画配信を行います。

 共催大学は次の通りです。共立女子大学、成蹊大学、拓殖大学、千葉工業大学、東海大学、東京理科大学、二松学舎大学、法政大学、立正大学、早稲田大学(50音順)

 ※本紙面は、ライブ動画配信をもとに再構成しました。

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