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 感染抑止に軸足を移すことをためらい、場当たり的な対応で感染者を急拡大させた末の「切り札」である。菅首相は危機的状況を招いた政治責任を厳しく受け止め、今度こそ、国民のいのちと暮らしを守る責務を果たさねばならない。

 首相がきのう、新型コロナ対応の特別措置法に基づき、昨年4月以来2度目の緊急事態を宣言した。全国の感染者の約半数を占める東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県が対象で、期間は2月7日までの1カ月間だ。

 前回の宣言の際は、国民に対し、他人との接触を最低でも7割、できれば8割減らす努力を求め、百貨店や映画館など幅広い施設に休業を求めた。今回は感染リスクが高いとされる飲食店の時短強化に的を絞りつつ、テレワークの推進や大規模イベントの入場制限なども行う。

 経済社会への影響をなるべく抑えたいという意図が明らかだが、これほど市中に感染が広がってしまった後で、どれだけ実効性をあげられるか、確たる見通しは持てない。感染者は4都県に限らず、大阪や愛知など都市部を中心に全国で拡大している。対象地域以外の動向にも細心の目配りが欠かせない。

 本当に1カ月で宣言を解除できるのかも不透明だ。西村康稔経済再生相は、感染状況が現在のステージ4(感染爆発)からステージ3(感染急増)に下がれば解除が視野に入るというが、政府の対策分科会の尾身茂会長は5日の会見で「1カ月未満では至難の業」との認識を示している。飲食店の時短営業だけでは感染者数は横ばいで、減少には至らないという専門家のシミュレーションもある。

 いずれにせよ、鍵を握るのは、幅広い国民の理解と協力に違いない。「コロナ慣れ」「自粛疲れ」がいわれる中、どこまで危機感を共有してもらい、行動変容を促せるか。政府による迅速でわかりやすい情報開示と、国民の心に響く政治指導者の言葉がこれほど求められる時はあるまい。

 首相はきのうの会見で、対策を徹底すれば「必ず感染を抑えられる」として、「制約ある生活」を強いられる国民に協力を要請した。特に若い世代に向けて、近親者らの「大切な命」を守ろうと訴えた。

 一方で、首相は時短要請に応じぬ飲食店名の公表や、罰則導入のための特措法改正の方針も明確にした。だが、強制的な手段に前のめりになる前に、政府への国民の信頼を取り戻すことが先決ではないか。そのためには、これまで足並みが乱れがちだった専門家や自治体との関係を再構築し、首相自ら責任を引き受ける覚悟を示すほかない。

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