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 与野党の党首が対等な立場で議論を交わす党首討論が、昨年は一度も開かれなかった。これもまた、安倍前政権から菅政権へと続く国会軽視のひとつの帰結といえるだろう。

 この制度は、英国議会をモデルに、国会審議の活性化と政治主導の政策決定をめざして、00年に正式に導入された。06年までは年に4~8回開かれていたが、その後、徐々に回数が減り、第2次安倍政権発足以降は年に1、2回、森友・加計問題が政権を揺るがした17年は、昨年と同じくゼロだった。

 与党は失点回避のため、首相の出番をなるべく減らしたい。一方の野党も、より長時間、首相を追及できる予算委員会の集中審議を優先しがちだ。そんな双方の思惑が背景にある。

 たまに実現しても、首相が質問をはぐらかしたり、持論を延々と述べたりするのでは、議論はかみあわない。立憲民主党の枝野幸男代表が3年前、安倍前首相との論戦後、「今の党首討論はほとんど歴史的意味を終えた」と語ったのはそのためだ。

 しかし、与野党のトップが国民の前で、大局的な見地から、議論を深める意義が失われたわけではない。今であれば、新型コロナウイルスの感染拡大への対応に党派を超えて知恵を出しあったり、コロナ後を見据えた社会のビジョンを競ったりする貴重な機会にできるはずだ。制度導入の原点に返り、この仕組みを生かす方途を探るべきだ。

 首相が本会議や委員会に出席する週には開かないという与野党の申し合わせはあるが、安倍前政権下の14年に、自民、公明、民主、維新など与野党7党は、弾力的な運用を図り、月1回実施できるようにするという新たな申し合わせを交わしている。まずはこの約束を、きちんと果たしてもらいたい。

 18年には、超党派の国会議員による「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」が、国民への説明責任を強化するため、さらに頻度を増やし、例えば2週間に1回とするよう提言した。多くの人がテレビなどで視聴しやすい夜間開催の提案などは、やる気があれば、すぐにでも実現できるはずだ。

 今年は4年ぶりとなる衆院選が行われる。小選挙区中心の現在の選挙制度の下では、各党が掲げる政権公約と同時に、党首の力量が、有権者にとって重要な判断材料となる。

 党首討論は、その人間性を含め、政治家の資質を見極める貴重な機会となろう。政治と国民の距離を縮めるうえでも役立つに違いない。週明けに召集される今年の通常国会では、毎月1回、必ず実現する――。与野党の合意を期待したい。

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