(まなぶ@朝日新聞)しっかり考え書く力、育む 開成中学・高校校長、野水勉さん

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 ■まなぶ@朝日新聞 ニュースを「生き抜く力」に

 2020年度は、新型コロナへの対応や大学入試改革で、教育現場が大きく揺さぶられる1年となりました。この波乱の時代をどう乗り越えるのか。昨年4月に開成中学・高校(東京都)の校長に就任した野水勉さんに、開成での取り組みを聞きました。

 ■波乱の時代、地道な努力は宝

 開成は昨年2月末の臨時休校要請を受け、前任の柳沢幸雄校長が、ICT(情報通信技術)に強い先生を中心に、各学年から担当の先生を加えてプロジェクトチームを作った。遠隔授業を円滑に行う方法をチームで考え、それぞれの先生に三つのやり方から選んでもらうことにした。

 一つはグーグル・クラスルーム(学習管理ツール)に教材をアップロードし、それを生徒がダウンロードして取り組む方法。ICTに慣れていない先生でも取り組みやすい。二つ目は先生が自分の授業をビデオ撮影し、生徒が見る方法。そして三つ目はZoom(テレビ会議システム)を活用して、オンラインで双方向の授業を行う方法だ。

 その取り組みのおかげで、4月の始業式の直後から遠隔授業を開始。4月中旬には、ビデオ授業やZoomの双方向性授業などを中心にした遠隔授業を展開できるようになった。その結果、授業に遅れは出ず、かなり内容のある遠隔授業ができたと感じている。期末試験も例年のスケジュール通り行い、夏休みも短縮せずに済んだ。

 開成の先生は普段から、自分の個性を生かした授業をやろうという意思が強い。だからこそ、遠隔授業もスムーズに導入できたのだと思っている。

 一方で、5月の運動会は中止にせざるをえなかった。運営の中心となる高3の意見も聞きつつ、最終的には全教員で議論して、断腸の思いで中止を決めた。

 しかし、生徒たちが運動会のために作詞・作曲した「エール」(応援歌)などを載せたパンフレットは例年通り作成した。小さいものの、「アーチ」(各組の応援のための巨大絵)も作って食堂に展示した。生徒たちが1年かけて準備してきたものを、形に残したいという思いからだ。

 現在、記述式や英語の4技能など、大学入試のあり方が議論されている。私たちは普段から受験技術を教えるのではなく、しっかり考え、書く力のある生徒を育てている。記述式が重視されるのはむしろ歓迎で、あえて対策を講じることは考えていない。

 開成の英語教育について言えば、私が学んだ50年前に比べると大きく変わった。ネイティブの先生が専任で2人、非常勤で5人いて、中1から英会話の授業がある。高校生に対しては選択制だが、毎日7、8時限にネイティブの先生による特別講座を開き、エッセーを書く練習やディスカッションをしている。

 高3には、海外のトップ大学の入学基準を満たす英語力を持つ生徒が20~30人いる。最近は、10人近くが実際に海外の大学に進学している。

 受験生はコロナに惑わされず地道に勉強してほしい。そして、小中学生向けの新聞でもいいから新聞を読んで自分の頭で世の中の動き、世界の動きを考え、自分の意見を持つようにしてほしい。

 結果が吉と出るか、出ないかは紙一重。大切なのは努力の過程だ。努力が大事な宝だということを胸に、がんばってほしい。

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 のみず・つとむ 1954年生まれ。開成中学・高校を卒業後、東京大学へ進学。5年半の特殊法人勤務の後、名古屋大学助手採用、同大工学研究科で博士号取得。ハーバード大学医学部客員研究員や名大教授などを経て現職。