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 選挙制度や政治資金をめぐる諸々(もろもろ)の改革を経てなお、このような政治家と業界の癒着を目の当たりにするとは、驚くほかない。政治への信頼を回復するには、公判での真相解明にとどまらず、菅首相や自民党が主体的に事実関係を明らかにすることが不可欠だ。

 安倍前政権下で農林水産相を務めた吉川貴盛氏が収賄の罪で在宅起訴された。在任中、鶏卵生産・販売大手の「アキタフーズ」前代表から3回にわたり、大臣室などで計500万円の現金を受け取ったとされる。

 前代表は吉川氏に対し、家畜の飼育環境に関する国際機関の基準案への反対を強く働きかけたほか、政府系金融機関による養鶏業界への融資拡大も依頼したという。

 日本政府は実際、当時の基準案に反対する意見を出し、その後、内容が見直されている。野上浩太郎農水相はきのうの記者会見でも「判断は妥当だった」と繰り返したが、その言葉だけでは、政策決定がカネでゆがめられたのではないかという疑念は払拭(ふっしょく)されない。

 大臣の職務に絡む賄賂と認定された500万円以外にも、吉川氏は就任前に9回計1100万円、退任後も2回計200万円を前代表から受け取っていたという。甚だしい倫理観の欠如である。疑惑発覚後、健康を理由に衆院議員を辞職したが、これまで一度も公の場で説明をしておらず、その無責任さにもあきれるばかりだ。

 しかし、事は吉川氏一個人の問題ではない。

 アキタ社の前代表は、昨年末まで内閣官房参与を務めていた元農水相の西川公也氏にも、昨年までの7年間に1500万円を超える現金を渡したと供述しているという。西川氏がアキタ社からクルーズ船で接待を受けた際は、元農水官僚も一緒だったとの指摘もある。

 自民党の長期政権下で、しばしば明るみにでた政官業の癒着の構造が根強く残っているのではないか。自民党は今週、吉川氏の離党を認めたが、無関係を決め込むことは許されない。党としても経緯をきちんと検証し、再発防止策を徹底する必要がある。

 行政のトップであり、党総裁でもある、首相の責任は極めて重い。先日の朝日新聞のインタビューで、後を絶たない「政治とカネ」の問題への対応を問われた首相は、「政治家個人が襟を正していくことが基本だ」と述べた。あまりに人ごとに過ぎないか。政治への信頼は、現下の最大の課題であるコロナ対策の成否にもかかわる。首相こそ、その回復の先頭に立たねばならない。

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