(社説)電力の逼迫 需給安定への教訓に

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 先月からの断続的な寒波と大雪で、電力需給が逼迫(ひっぱく)している。全国的に暖房利用が増え、需要が前年より1割ほど多くなったことが大きな要因だ。

 今月8日、東北や中国など7地域で需要が想定を超えた。九州では昨年度の電力の12%を賄った太陽光発電の出力が落ち、10日には供給余力が一時、ほぼゼロになった。

 国内発電の4割を占めるLNG(液化天然ガス)火力の稼働が思うように上がらないのも誤算だ。気化するので保管が難しいLNGは、備蓄がもともと少ない。そこに昨年末から続く需要増で、在庫が細って稼働を抑えざるを得なくなった。

 LNGへの依存度がより大きいガス会社が長期契約を重視するのに対し、大手電力は安値傾向にあったスポット契約を多めにしていたとの指摘もある。

 LNGの新規調達には2カ月程度かかるという。電力業界は、暖房などを除いたうえで、日常生活に支障のない範囲で節電へ協力するよう呼びかけている。厳寒期に電気が途絶えれば人命にかかわる。電力各社は燃料の調達を急ぐなど、当面の安定供給に最善を尽くさねばならない。

 電力需給の逼迫は東日本大震災直後などにも起きたが、発電設備の不足で需要のピークを賄えないことが問題だった。今回は設備能力はあるものの、燃料不足で発電の総量を上げられない状態が長引きそうだ。

 経済産業省は今冬を前に、原発の再稼働が進んでいない現状でも、10年に1度程度の厳冬なら乗り切れるとしていた。ピーク時をしのげる発電能力を確保するという考え方で十分だったのか。経産省や電力業界は今回の問題の原因を究明し、再発防止に努めるべきだ。

 需給逼迫を受け、電力会社間で取引する卸電力の価格が急騰し、市場では一時、家庭向け料金水準の10倍を超える高値をつけた。電力小売りの自由化で新規参入した新電力の多くは市場で電力を調達しており、一部では料金が上がる見通しになった利用者もいる。新電力の監督・育成や利用者保護、市場のあり方を検証する必要がある。

 政府が主力電源化をめざす再生可能エネルギーでも、課題が浮き彫りになった。国内の再エネが太陽光に偏っていると不安視する声は、以前からあった。晴れていなくても発電できる風力の増強などが大切だ。蓄電池など電気をためる技術の開発も欠かせない。

 今回の教訓ももとに、再エネを最大限活用できる電源の最適なバランスを追求することで、将来原発に頼らずに脱炭素社会を実現する道が開けるだろう。