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 新型コロナの感染が急拡大し、11都府県に緊急事態宣言が出されるなか、昨年秋に安倍長期政権を引き継いだ菅首相が初めて臨む通常国会が始まった。

 喫緊の課題は、言うまでもなくコロナ対策である。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)の度を増しているというのに、行動変容を求める政治や行政のメッセージは、人々には届いていない。国民のいのちと暮らしを守るために何が必要か、与野党の枠を超えて知恵を出し合うべきだ。

 同時に、前政権下で失われた国会の政府に対するチェック機能、立法府と行政府の緊張関係を取り戻す必要がある。まずは、菅政権が前政権の「負の遺産」を直視し、信頼回復に全力をあげることが不可欠である。

 残念ながら、きのうの首相の施政方針演説は、いずれの観点からも及第点には程遠い。

 まずはコロナ対策である。首相は「一日も早く収束させる」「闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく」と語り、飲食店の時短営業の徹底などを改めて掲げた。しかし、多くの国民が、1カ月で緊急事態を脱することができるのか疑問に思っている時に、求められるのは言葉の強さではなく、具体的で説得力のある展望である。

 早期成立をめざす特別措置法の改正については「罰則や支援に関して規定し、飲食店の時間短縮の実効性を高める」と述べた。罰則の導入には、市民の自由や権利との兼ね合いや実効性をめぐって様々な議論がある。こんな簡単な言及で、国民の理解が得られると思っているのだろうか。

 一方の立法府との関係である。「桜を見る会」の前夜祭への費用補填(ほてん)を否定した安倍前首相の説明は「虚偽」だった。首相は演説の最後で取り上げ、「大変申し訳なく、おわび申し上げる」と述べた。

 だが、安倍氏に同調した自身の答弁について頭を下げただけであり、行政府の長として、立法府に真摯(しんし)な反省を示し、再発防止を誓うようなものではなかった。

 先週、在宅起訴された吉川貴盛元農水相の贈収賄事件については触れずじまい。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題も、昨年秋の臨時国会での所信表明演説と同じく素通りで、説明は一切なかった。

 首相は「政治家にとって、何よりも国民の信頼が不可欠」とも述べたが、本気でそう思い、説明責任を尽くそうとしているのか、はなはだ疑わしい。

 今年は4年ぶりとなる衆院選が控えている。明日から始まる論戦で、首相には国民の厳しい視線に正面から向き合う覚悟を求めたい。

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