(社説)米軍低空飛行 無軌道に歯止めかけよ

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 沖縄本島西の慶良間(けらま)諸島で、編隊を組んだ米軍機の超低空飛行が年末年始に繰り返された。山の間をぬうように旋回する姿に住民は恐怖を感じ、沖縄県議会の特別委員会は14日、全会一致で抗議声明を出した。

 一歩間違えれば大惨事につながりかねない米軍の無軌道ぶりだ。断じて容認できない。

 日米地位協定に基づく航空特例法で米軍機は高度規制の対象外とされるが、両国政府は1999年に「安全性を最大限確保し、住民への影響を最小限にする」との合意を取り交わしている。今回の異常な飛行はこれを踏みにじるものであり、政府は厳重に抗議し、合意の徹底順守を求めるべきだ。

 現場が訓練空域外だったことも看過できない。ところが岸信夫防衛相は会見で「米軍による飛行訓練はパイロットの技能の維持・向上を図るうえで必要不可欠」「日米安保条約の目的達成のための重要な訓練」と述べ、容認する考えを示した。

 米軍の主張そのものであり、耳を疑う。沖縄には、その当否は別として、20の広大な米軍訓練空域がある。にもかかわらず、なぜいま、わざわざ域外で訓練する必要があったのか。何の説明にもなっていない。

 わかったのは、岸氏が目を向けている先は国民でなく米国だということだ。自民も加わった先の抗議声明が、防衛相を名指しで批判したのは当然である。

 米軍機による低空飛行への恐怖と憤りは沖縄に限ったものではない。本土でも基地を抱える地域やその周辺で、人々のくらしが脅かされている。

 全国知事会は18年の「米軍基地負担に関する提言」で、真っ先に低空飛行訓練を取りあげ、地位協定を抜本的に見直して、航空法などの国内法令を米軍にも適用させることを求めた。

 昨秋にも「提言内容が実現したとは言い難い」として、低空飛行訓練の実態調査、訓練ルートや時期に関する事前の情報提供、そして地位協定の改定を改めて国に突きつけた。

 決して無理な要求ではない。

 沖縄県の調査では、ドイツイタリアベルギー、英国は、米軍機の飛行に国内法を適用している。過去の取り組みや安全保障環境の違いをあげて適用できない理由を言い立てるのではなく、住民の安全を守り、不安を解消するために、どうやって適用できるようにするかを考える。それが政治の責務だ。

 きのうの施政方針演説で菅首相は「一貫して追い求めてきたものは、国民の『安心』そして『希望』だ」と述べた。

 沖縄の、いや全国の基地問題に苦しむ国民のために、その言葉を行動で示してほしい。

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