(社説)SNSの規制 事業者の責任は重大だ

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 トランプ米大統領が、ツイッターSNSなどのソーシャルメディアから締め出された。この事態は、ネットの言論空間を健全に発展させるうえで、重い問いを投げかけている。

 トランプ氏の投稿はかねて、差別や憎悪をあおり、事実に反する内容が多いと問題視されてきた。大統領選も「不正だ」と根拠を示さずに繰り返した。

 ツイッター社は警告文を付けるなどの対応をしてきたが、6日の米議会襲撃事件を受け、アカウントを一時的に停止した。トランプ氏が呼びかけた集会が襲撃につながったためだ。

 同社は規約で、暴力賛美につながる投稿を禁じている。新たな投稿がさらなる暴力を誘発しかねないとして、その後に「永久停止」の措置をとった。

 再三にわたる警告の末の停止は少なくとも当面、やむをえまい。20日の大統領就任式に向けて全米で抗議行動が起きる恐れが指摘されており、緊急措置的な意味合いもあった。

 大統領は記者会見や声明発表ができるので、意見表明の手段を奪われたわけでもない。

 ただ、今回の経緯を通じて、事実上の公共空間になっているソーシャルメディアの言論が、巨大IT企業によって独占的に管理されている現実も浮き彫りになった。

 メルケル独首相は、表現の自由の制約は事業者ではなく、法の枠組みの中で行われるべきだとの考えを示した。

 たしかに、膨大な利用者の情報を蓄積して利益に結びつける一握りの私企業に、言論空間を左右する判断がゆだねられていることには問題がある。

 一方で、国家が介入すれば、言論統制にもなりかねない。民主的な国ならば、独立した司法の判断が下されうるが、三権分立などの国情はまちまちだ。

 とくに非民主的な国々では、市民が声を上げ、連帯する手段としても、公権力に制御されないSNSなどの役割が大きい。

 国の関与は最低限にとどめ、事業者側が公正なルール整備と継続的な更新を進め、公開しておくことがまず求められる。

 悪質な投稿の放置や、発信の削除、アカウント停止などが問題になった際は説明責任を果たし、十分な透明性が確保されなくてはならない。

 企業の利害と相反する判断が求められるケースもあろう。第三者の立場から放送番組を審査する日本の放送倫理・番組向上機構BPO)のような取り組みも参考になるかもしれない。

 ソーシャルメディアが国境を越える影響力を持つようになってまだ10年あまり。事業者、利用者、各国政府ともに、不断に知恵を出し合う必要がある。