帰れぬ実習生、1000人超が無職 コロナ特例の「転職」進まず 入国は昨夏以降4万人=訂正・おわびあり

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 新型コロナウイルス禍で働けずに国内にとどまる技能実習生が、昨年末時点で少なくとも1千人超いる一方、昨夏以降に新たに4万人超の実習生が入国したことが朝日新聞のまとめで分かった。実習生は昨春からコロナ特例で「転職」も認められたが、再就職が十分に進まないまま、次の実習生を大量に受け入れている状況が浮き彫りになった。

 厚労省によると、コロナ禍による倒産や解雇などで職を失った実習生は、昨年11月末時点で国内に約3千人いる。このうち1月時点で、約100人が次の仕事に就けていない。また法務省によると、受け入れ期間が終わったのに母国の入国制限などで帰国できない実習生は、昨年末時点で約3万6千人おり、うち約1千人は明らかに働き先がない状態だ。実習生の失踪なども多い。

 実習生は従来、来日時に決められた職場や職種でしか働けなかった。法務省は昨年4月、コロナで失職したり帰国できなくなったりした実習生らを支援するため、介護や農業など新設された在留資格「特定技能」の対象14業種であれば、1年限定で新たな受け入れ先で働けるようにした。しかし、この支援策で「転職」できた人は今月12日時点で1716人にとどまり、仕事のない約1100人の救済には至っていない。

 その一方で、外国人の入国拒否が段階的に緩和された昨年8月以降、今月3日までに新たに実習生4万人が入国。特に、原則拒否が解除された昨年11月以降に急増している。

 NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は、「実習生の受け入れ窓口を担っている監理団体は、新たに入国させた方が(手数料で)稼げる」と指摘。「それだけ人手が必要な仕事があるのに、いったん来日して働けなくなった実習生は十分な再就職支援などがなされておらず、使い捨てともいえる状況。国が救済策を強めるべきだ」と指摘する。

 ■職探し、自力では困難

 1月13日夕。仕事を失ったベトナム人を支援する東京都港区の寺を、20歳のベトナム人技能実習生2人が訪れ、訴えた。「何でもいい。仕事がしたい」

 四国のスーパーで働いていたが、昨年末、コロナ下で辞めさせられた。まだ日本で働きたいと、受け入れ時の窓口となった監理団体にこの寺を紹介された。寺には今、20~30代のベトナム人の男女約35人が暮らす。支援にあたるNPO「日越ともいき支援会」吉水慈豊(じほう)代表は生活支援をしながら、信頼できる全国数十社への紹介を進めている。これまでに数千件の相談があり、約200人を保護して、100人弱の再就職につなげたという。

 困った実習生の次の仕事が見つからない原因について、移民政策に詳しい日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は「(仕事探しの)責任主体が決まっていない」ことを挙げる。実習生は自分でハローワークで仕事も探せるが、現実には十分な情報が行き渡らない上、日本語の壁などもあって難しい。

 外国人問題に詳しい指宿昭一弁護士は「基本的には監理団体まかせになっている」と指摘した上で、「監理団体には動くインセンティブ(動機)がない」と話す。実習生に特定技能14業種での転職先が見つかり、在留資格が切り替わってしまうと、受け入れ企業から管理費が出なくなるためだ。

 一方で、特定技能の働き手を探す企業などに外国人を紹介しているフォースバレー・コンシェルジュ(東京)は「人手不足の業界はあり、累計200件ほどの案件はあるが、実習生に情報が十分に届いていない」。「ともいき支援会」の吉水代表は、「監理団体に代わって、専門的にマッチングする団体に委託するなどの仕組みをつくるべきではないか」と話す。

 「実習」の名のもとに外国人を労働力として活用してきた技能実習制度の問題点は長年指摘され続けてきただけに、日本国際交流センターの毛受執行理事は「技能実習制度の改革のあり方は、日本が本当に『選ばれる国』になるかどうかの試金石だ。コロナ後の外国人材の獲得競争を見越したビジョンづくりも進める時だ」と警鐘を鳴らす。藤崎麻里

 <訂正して、おわびします>

 ▼21日付経済面「帰れぬ実習生 1000人超が無職」の記事で、外国人技能実習生の在留資格が切り替わると、受け入れ窓口となった監理団体に「国から管理費が出なくなる」とあるのは「受け入れ企業から管理費が出なくなる」の誤りでした。支払い元を誤って補い、確認が不十分でした。

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