(社説)コロナの法改正 疑問が尽きない政府案

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 政府は新型コロナ対策関連法の改正案を閣議決定した。今国会での早期成立をめざす。

 感染拡大の抑止は、政治がいま取り組むべき最大・緊急の課題だ。しかし内容、効果、決定までの手続き、いずれをとっても改正案には疑問が多い。

 市民一人ひとりの人権に深く関わり、社会のありようにも様々な影響が及ぶと予想される法案だ。国会は与野党の立場を超えて内容を精査し、問題点の解消に努めなければならない。

 改正案を貫くのは、行政の権限を強化し、指示に従わない者には制裁を加えて、力で抑えつけようという発想だ。

 例えば感染症法改正案には、▽自宅やホテルでの療養者に、知事が外出禁止などの協力を要請できるようにする▽応じない者には入院を勧告できる▽従わなければ1年以下の懲役などを科す――という規定がある。

 実際に入院先や療養先から無断で外出する例があるとして、全国知事会は措置の実効性を高めることを要望してきた。

 しかし、そうした行動をとった人の中には、そうせざるを得なかった種々の事情があったとも考えられる。それをひとくくりにして、刑事罰の対象とすることが正義にかない、効果につながるのか。そもそもどれほどの実例があり、どんな弊害を生んでいるのか。政府から納得のゆく説明はされていない。

 どんな法律の制定でも、その合理性を支える社会的、経済的、科学的事実(立法事実)を踏まえた、慎重な議論の積み重ねが求められる。個人の自由を縛り、違反すれば刑罰まで科そうというのならなおさらだ。

 ところが政府が今回の法改正の方向性を示したのは、感染の急拡大を受けて2週間前に開かれた与野党協議の場が最初で、唐突感は否めない。罰則に傾斜した法整備に走れば、検査を避けたり、感染の事実を隠そうとしたりする人が増える恐れがあるが、そうした指摘をどう考えているのかも判然としない。

 あわせて閣議決定された特別措置法の改正案も問題を抱えたままだ。営業時間の短縮や休業要請に応じた事業者への支援に一歩踏み出したものの、肝心の中身ははっきりしない。

 一方で「まん延防止等重点措置」なるものを新設し、緊急事態宣言を出す前から、罰則を背景に私権制限に乗り出せるようにする条文を盛りこんだ。しかし発出の要件はあいまいで、政府案のままでは到底受け入れられるものではない。

 菅首相は国会で「引き続き与野党の意見も伺う」と述べた。浮上している数々の疑問にまず政府が誠実に答えることから、議論を深めていく必要がある。

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