[PR]

 新型コロナウイルスの感染拡大による医療の逼迫(ひっぱく)が深刻だ。入院・療養先が見つからずに自宅待機を余儀なくされる人や、救急搬送の困難事例が各地で増えている。病床の確保と医療体制の立て直しに、総力を挙げねばならない。

 政府が国会に提出した感染症法改正案には、入院勧告を拒んだ人への罰則などに加え、厚生労働相や都道府県知事の権限強化が盛り込まれた。病床確保が必要な場合に医療機関に対し、協力要請にとどまらず勧告することができ、従わなければ病院名を公表できるようにする。

 日本は、欧米諸国より人口当たりのベッド数が多く感染者数は少ないが、コロナの患者を受け入れる病院が思うように増えない。とりわけ、一般病院の7割を占める民間病院で受け入れが進んでいないとして、法改正をテコに協力を迫る考えだ。

 だが、強権的な手法で病床が増えるかは疑問だ。

 受け入れが進まない背景には、経営上のリスクに加え、治療や感染防止対策に必要な設備や人員が足りないといった事情もある。そうした不安に応える支援こそが必要だ。

 政府は緊急事態宣言が出された地域の受け入れ病院には、1床当たり重症患者用で1950万円、中等症以下で900万円の補助金を出しているが、十分なのか。関係者の声を聞き、必要なら拡充も考えるべきだ。

 ただ、感染症に不慣れな中小の病院に広く患者を受け入れてもらえば、院内感染のリスクを高める心配もある。そうした病院には、コロナを受け入れる病院で診られなくなったコロナ以外の患者の診療や、回復後も引き続き療養が必要な患者を受け入れてもらう方が合理的だ。

 地域によっては自治体が中心となり、域内の病院の役割分担や連携体制作りを進めている例もある。感染症法改正案には、保健所設置市や特別区などの枠を超えた入院等の総合調整を、知事が担うことも明記された。その責任は重い。

 医師会や病院の関係団体なども、病床確保のための会議を立ち上げた。医療界は、政府や自治体に言われる前に、自発的に問題を解決することを重視してきたはずだ。大学病院から診療所まで、それぞれが利害や立場を超え、自治体と協力して病床確保に努めてほしい。

 ベッドが空いていても、マンパワー不足で受け入れられないとの声も聞かれる。なかでも看護師の不足は深刻だ。退職した元看護師を掘り起こし、再就職を支援する取り組みが求められる。

 強権的な手法に頼らずとも、やれることは多いはずだ。

こんなニュースも