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 「気候危機への対応はもう待てない。いま行動のときだ」

 バイデン米大統領は先週、地球温暖化対策の大統領令に署名した。「気候変動は地球存亡の脅威だ」として、対策の国際ルール・パリ協定に復帰し、4月に気候サミットを開いて世界をリードしていくという。

 すでに日中韓など多くの国が「温室効果ガス排出を実質ゼロにする」と宣言している。中国に次いで排出が多い米国が再び動き出すことで、世界の気候変動対策は加速するだろう。

 コロナ禍からの復興を奇貨として、社会や経済の脱炭素化を急がねばならない。

 ■止まらぬ地球温暖化

 森林などの吸収量を差し引いた実質的な排出量をゼロにする。そんな脱炭素社会を「2050年にめざす」と宣言した国は120カ国を超える。

 目標とする約30年後の未来は、どうなっているだろうか。

 思えば30年前、ハイブリッド車や電気自動車は走っておらず、太陽光パネルのある住宅を見かけることはまずなかった。当時、2021年の社会を予見できた人は少なかったはずだ。

 脱炭素社会への変化は、より大きいかもしれない。あちこちの海に巨大な風車が林立し、水素燃料の飛行機や船が空や海を行き交う……。石炭や石油などの化石燃料に頼る文明と決別するような変革である。

 道は険しいが、急がねばならない。事態は切迫している。

 国連環境計画(UNEP)によると、2010年以降、二酸化炭素(CO2)排出量は毎年1・4%ずつ増え、今世紀中に世界の平均気温が産業革命前より3・2度も上がるという。

 すでに上昇幅は1・2度に達し、「気温上昇をできれば1・5度に抑える」というパリ協定の努力目標を間もなく超えてしまう勢いだ。

 ■コロナ禍からの復興

 昨年はコロナ禍で社会や経済の活動が世界的に滞り、CO2排出が前年より推定7~8%ほど減った。それでも排出量はまだまだ多く、気温の上昇を抑える効果は限られる。

 むしろ今後、経済が回復に向かえば、排出増に逆戻りすることが気がかりだ。排出を減らしながら経済を立て直すグリーン復興が欠かせない。

 欧州連合(EU)は30年の削減目標を55%へ引き上げ、コロナ禍からの復興基金と今後7年間の予算の計1・8兆ユーロ(約228兆円)のうち3割をグリーン復興にあてる。米バイデン政権は35年までに電力の脱炭素化をめざし、電気自動車やエコ住宅の普及などに4年間で2兆ドル(約209兆円)を投じる。

 11月には、コロナ禍で1年ほど延期された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開かれる。グリーンな経済回復の動きは、ますます加速していくに違いない。

 国別排出量が5位の日本も本気度が試される。

 菅政権は昨年末、「50年に実質ゼロ」のためのグリーン成長戦略をまとめた。新たな技術開発などで脱炭素と成長の両立をめざすという。

 留意すべきは、30年の時点で排出をほぼ半減させていないと「50年に実質ゼロ」の実現はおぼつかない点だ。いまの政府目標の26%削減は不十分で、COP26までに思い切った引き上げが求められる。

 今後10年たらずで大幅削減するには、新たな技術開発を待ってはいられない。石炭火力発電からの撤退、CO2排出に課金するカーボンプライシング(炭素税や排出量取引)の導入、再生可能エネルギーの大幅な拡大などに、すぐ着手すべきだ。

 ■グリーンな社会こそ

 すでにビジネスでは、脱炭素の競争が始まっている。

 欧米や中国の自動車メーカーは電気自動車の市場投入を競い始めた。脱炭素化が難しいとされてきた航空機や製鉄などの業界も、化石燃料の代わりに水素を利用する技術の研究開発に本腰を入れている。

 アップルやマイクロソフトのようなグローバル企業が、サプライチェーン全体で脱炭素や再エネ100%をめざす例も珍しくなくなった。

 事業規模にかかわらず、脱炭素の対応が遅れれば新時代のビジネスで生き残れない。日本の企業もそう認識し、事業の変革を加速させてほしい。

 消費者の姿勢もまた問われている。世界の排出量の3分の2は家庭生活と関わっており、一人ひとりが暮らしをグリーン化する意義は大きい。

 再エネや電気自動車の利用のほかにもできることは多い。肉食に偏りがちな食生活の見直しや脱プラスチックは温暖化対策と無関係に見えて、実は、食肉の生産・加工・運搬にともなう排出やゴミ焼却の際の排出を減らすことにつながる。

 UNEPによると、所得の上位10%の人々だけで世界の排出量のほぼ半分を占めるという。先進国で暮らす私たちは責任の大きさを自覚し、日常生活の見直しに努めなければならない。

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