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 疑問の解消にほど遠い急ぎ足の審議で、新型コロナ対策関連法が参院で可決・成立した。

 与党と立憲民主党との事前の協議を踏まえ、政府案は一部修正された。それでも感染拡大の責任を市民の側に転嫁し、罰を与えることで行動を抑えつけようという強権的な姿勢は、本質において変わっていない。

 たとえば感染症法を改め、入院措置に応じない人は50万円以下の過料にするという。

 政府はきのうになってようやく、照会に「入院拒否の例がある」と答えた自治体の数を明らかにした。しかし実際に拒否された件数や理由、事情などの説明はない。そもそも照会したのは、政府案を閣議決定した後の先月25日だという。ずさんな法案づくりを象徴する話だ。

 疫学調査を拒んだり、うそを申告したりする行為も過料の対象となる。手続きは保健所などの行政機関が担うが、当の保健所はいま、感染者の対応に追われ、本来やるべき調査すら十分にできない状態にある。疲弊している現場にさらに荷を負わせてどうするのか。本末転倒というほかないが、政府から具体的な対策は示されていない。

 留意すべきは、この過料の規定は新型コロナに限らず、一部の別の感染症にも適用されることだ。検査忌避や病気の隠蔽(いんぺい)、差別意識の助長などを広く招く恐れはないか。影響を慎重に見極める必要がある。

 営業時間の短縮などの要請・命令に違反した事業者を過料とする規定も、改正特別措置法に盛りこまれた。ここでも、誰がどのように違反をチェックするのかという疑問が生じる。

 感染防止対策がいい加減でも時短要請さえ守ればいいのか。密告やいわゆる自粛警察がはびこることにならないか。公平性や実効性がはっきりしないままの、罰則ありきの改正だ。

 一方で付帯決議などで明確化するとしていた、要請に応じた事業者への財政支援は「経営への影響の度合い等を勘案」といった表現にとどまり、これまた実効性に疑問符がつく。

 法改正の必要性は以前から指摘されていたが、安倍、菅政権とも先送りを重ねてきた。冬の感染拡大は予想されたことで、判断の誤りは明らかだ。

 まして罰則を伴い社会に大きな影響を及ぼす立法は、本来、様々な専門家や国民の意見を聴き、丁寧に手順を踏んで行うべきだ。それを、緊急事態宣言が発出されて世の中が騒然とするなかで拙速に成立させたのは、今後に大きな禍根を残した。

 危うさを抱える一連の法律だからこそ、施行後の運用に目を光らせ、必要に応じての再見直しをためらうべきではない。

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