(社説)女性差別発言 森会長の辞任を求める

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 そうでなくても懐疑論が国内外に広がるなか、五輪の開催に決定的なマイナスイメージを植えつける暴言・妄言だ。すみやかな辞任を求める。

 東京五輪パラリンピック組織委員会の会長を務める森喜朗元首相の女性蔑視発言である。

 日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会に名誉委員として出席して、次のような耳を疑う見解を口にした。

 女性がたくさん入っている(スポーツ団体の)理事会の会議は時間がかかる。女性は競争意識が強く、1人が手を挙げて発言すると自分も言わなければと思うのだろう。規制しないとなかなか終わらない――。

 森氏はきのう会見し、反差別や男女平等原則の完全実施をめざす五輪精神に反するものだったと謝罪。発言を撤回したが、会長職の辞任は否定した。

 それで許されるはずがない。

 こんなゆがんだ考えを持つトップの下で開催される五輪とはいったい何なのか。多くの市民が歓迎し、世界のアスリートが喜んで参加できる祭典になるのか。巨費をかけて世界に恥をふりまくだけではないのか。疑念が次々とわいてくる。

 JOCをはじめとするスポーツ団体は、20年代のできるだけ早い時期に女性理事を40%とする目標を立てている。昨年末に決まった政府の男女共同参画基本計画にも明記された。

 背景には、女性の社会進出を進めるという世の中全体の要請に加え、女子選手への相次ぐ暴力的指導やパワハラセクハラなど、スポーツ界が抱える深刻な問題がある。コンプライアンスの向上が求められるなか、女性指導者の育成と女性幹部の登用は喫緊の課題だ。

 にもかかわらず組織委の会長がその取り組みを揶揄(やゆ)し、女性理事ひいては女性全般を侮辱したのだ。責任は極めて重い。

 問われるのは森氏だけではない。発言があった際、出席していたJOCの評議員らからは笑いがおき、たしなめる動きは一切なかった。山下泰裕会長以下、同じ考えの持ち主と受け取られても言い訳できない。

 この問題はさっそく国会の質疑でも取りあげられた。菅首相は「あってはならない発言」と述べたものの、森氏の進退については言及を避けた。

 7年前に組織委が設立された際、会長の引き受け手がなく、政府主導で森氏に就任を要請した経緯がある。何としても五輪を開催したい首相としては、森氏の謝罪―続投で事態の沈静化を図りたいのだろうが、それでは世論との乖離(かいり)は深まるばかりだ。開催都市の女性首長である小池百合子都知事の見識も問われる局面である。

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