(社説)橋本新会長 課題山積、厳しい船出

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 東京五輪パラリンピック組織委員会の新しい会長に橋本聖子氏が就任した。

 女性蔑視発言で辞任した森喜朗氏に代わる五輪の顔をどう選ぶか。多くの注目が集まるなか、組織委がとった手法は拙劣だった。候補者を絞る検討委員会のメンバーの氏名を座長以外明らかにせず、3度開いた会議もすべて非公開とした。

 森発言は女性の尊厳を踏みにじっただけではない。一人ひとりが自分の意見を持ち、議論を交わして合意を形づくるという会議本来のあり方を真っ向から否定するものであり、その観点からも批判を浴びた。新会長の選出を、こうした体質からの脱皮を社会に示す第一歩にしなければならなかったのに、ガラス張りにはほど遠い運営だった。

 五輪が間近に迫り、急ぐ必要があった事情は分からないではない。しかしこれでは人々の理解や共感は得られず、森氏が招いた不信の払拭(ふっしょく)も遠い。

 多くのスポーツ団体の指導者が透明性を欠く手続きで選出され、それが相次ぐ不祥事の背景にあると指摘されて久しい。抜本的な意識改革が求められてきたのに、今回も結果として旧態依然のやり方がまかり通った。残念というほかない。

 検討委は新会長に求められる資質として、▽五輪・パラリンピックやスポーツへの深い造詣(ぞうけい)がある▽男女平等や多様性を始めとする大会の理念を実現できる――などの五つをあげた。橋本氏がこれにかなう人材かどうかは、今後の行動で決まる。

 橋本氏は五輪のメダリストであり、19年9月から担当大臣を務めてきた。準備状況は熟知しているはずだが、国際オリンピック委員会やスポンサーなど多くの関係者と物事を調整し、巨大な組織を運営・リードしていく能力は未知数だ。また過去にセクハラパワハラの疑いが話題になったこともあり、厳しい視線が注がれていることを自覚しなければならない。

 オリンピズムの根本原則である政治的中立を全うできるか、という重大な問題もある。

 橋本氏は森氏を政治の師と仰ぐ。会見では参院議員を続けるとし、自民党離党についてはあいまいな答えをした。菅首相が五輪を政権浮揚につなげたい思惑をもっているのは明らかで、橋本氏が会長に就任するまでに首相官邸の影が見え隠れした。よほど心しないと五輪に深刻な傷を残すことになりかねない。

 コロナ禍で開催を危ぶむ声がしきりのなか、課題は山積している。それらを解決していくには、組織委が十全に取り組んできたとはいえない、情報の公開と丁寧な説明が不可欠だ。ここでも新会長の覚悟が問われる。

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