(社説)米軍駐留経費 地域の安定を見据えて

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 同盟への信頼を損なう過大な要求は、米国にとっても得策ではあるまい。同盟重視を掲げるバイデン政権には、大局的な見地から、仕切り直しの交渉に臨んでほしい。

 3月末の期限切れを前に、在日米軍の駐留経費の負担を定める特別協定の改定問題が決着した。来年度の日本側負担は2017億円と現行の水準を維持する。2022年度以降の4年分については改めて交渉し、年内の合意をめざす。

 特別協定は5年おきに見直されているが、今回は米国の政権移行期をはさむ展開となった。トランプ前大統領は同盟国に米軍駐留経費の大幅な負担増を求め、安倍前首相との間で緊密な関係を築いた日本に対しても、その姿勢は同じだった。

 日本は1970年代後半から「思いやり予算」の名の下に、駐留経費の一部負担を始めた。その範囲は拡大を続け、他の同盟国に比べ、厚遇ぶりは突出している。厳しい財政事情や国民感情を考えれば増額には応じがたく、交渉の早期妥結は困難だった。米国の政権交代を機に、腰を据えて交渉をやり直すのは妥当な判断だ。

 ただ、米国が負担増を求める流れは変わらず、バイデン政権も日本側に増額を求めているという。交渉は平坦(へいたん)な道ではないだろうが、地域の安定に資する同盟像をともに描きながら進めることが肝要だ。

 米中対立が続くなか、いかに穏健な地域秩序を築くかは難問である。日米を基軸としつつ、日米豪印や日米韓、欧州や東南アジア諸国連合ASEAN)との協力など、連携の輪を重層的に広げたい。と同時に、緊張緩和と信頼醸成を旨とし、中国をも巻き込むような多国間の協調体制をめざす必要がある。

 米軍の駐留には地域住民の理解が欠かせない。その不安や懸念に向き合わず、過重な負担ばかりを押しつけては、同盟の支えが失われかねない。そのことを、日米両政府の当局者は真剣に受け止めるべきだ。

 とりわけ重要なのは、米軍基地が集中する沖縄への対応である。民意を無視して強行する辺野古の新基地計画は、もはや破綻(はたん)している。両政府が沖縄県を交えて、打開策の検討に乗り出さねばならない。

 米軍機の低空飛行訓練は、沖縄に限らず日本各地で繰り返され、再三の抗議が踏みにじられてきた。在日米軍にさまざまな特権を認める日米地位協定の見直しも待ったなしである。

 まずは、日本政府が米国に問題提起しなければ始まらない。「同盟強化」を唱えるなら、国民の支持という基盤固めにも全力であたるべきだ。

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