(社説)ミャンマー 国軍の退場が民意だ

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 国軍がこれ以上、強権をふるうことは許されない。ただちに市民への暴力をやめ、民主的な政権が統治する正常な姿に戻すよう強く求める。

 クーデターで国軍が権力を握ったミャンマーで、市民のデモが広がっている。これに治安当局が発砲し、死傷者が多数にのぼる事態になった。

 通信が遮断される夜間、人びとが相次いで拘束されている。国軍は、非暴力のデモに対し「命を落とす衝突へと民衆を駆り立てている」と警告した。

 抵抗すれば容赦なく武力で鎮圧する、との意思表示である。冷徹で非道な態度であり、断じて容認できない。

 国軍は、自らの権力掌握や、昨年の選挙で勝ったアウンサンスーチー氏らの拘束について、憲法や法律にのっとった行為だと強弁している。

 しかし、大規模なデモは2週間以上収まらない。公務員らが職場を放棄する「不服従運動」も広がる。停戦に応じていた10の少数民族組織は、国軍との対話を中断すると発表した。国民が軍の統治に対し、正当性を認めていない証しである。

 国際社会は批判を強めている。米国は国軍幹部らに資産凍結などの制裁を科した。米英仏独の外相は共同声明で即時の民政復帰を求めた。ミャンマーへの主要な投資国であるシンガポールも「言い訳できない行為だ」と指弾している。

 国軍が真に国家の安定と繁栄を願うなら、スーチー氏らを解放し、武力で奪った権力を手放すしかない。

 日本は外務省報道官が「強く非難する」との談話を出したが、手ぬるい。民主化の逆行と流血に対する姿勢が厳しく問われている局面なのだ。

 日本はこれまで、経済制裁などの圧力より、対話による民主化促進を重んじてきた。いわゆる「建設的関与」策は、相手側も民主化の最終目標を共有していて初めて意味がある。

 しかし、この10年続いた民政定着への歩みを国軍は力で覆したのである。流血を避けるよう訴えた日本の懸念も聞き入れなかった。「建設的関与」は破綻(はたん)したと言わざるをえない。

 国軍を追い詰めれば、中国への依存を深めるとの見方がある。だが、ミャンマーの最大の貿易相手は中国であり、2019年の輸入・輸出とも全体の3割以上を占めている。

 欧米などから批判されても、中国が後ろ盾になると見越して強硬策に出たとみるべきだ。

 自由、民主主義、基本的人権の拡大に共に努力する。この日本の東南アジア外交の原則を再確認し、ミャンマー国軍に毅然(きぜん)と向き合うときである。

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