(社説)生活保護判決 政治的削減への警告だ

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 自民党が掲げた生活保護費カットの方針に沿った戦後最大の引き下げ。そんな政治状況におもねった恣意(しい)的な削減への、司法からの強い警告である。

 国が2013~15年に段階的に行った生活保護基準額の引き下げは、判断過程や手続きに過誤や欠落があり違法とする判決を、大阪地裁が言い渡した。

 全国29地裁で同様の裁判が起こされ、判決は2例目。昨年夏の名古屋地裁判決は、生活保護行政を担う厚生労働相の広い裁量権を認め、訴えを退けた。今回の大阪地裁も厚労相の裁量権は認めつつ、客観的な統計や専門的知見との整合性がなく、裁量権の逸脱にあたると断じた。真摯(しんし)に受け止めねばならない。

 国が減らしたのは、生活保護で支給される費用のうち、衣食など日々の生計費をまかなう生活扶助だ。判決は、物価の下落を反映させるとして行われた「デフレ調整」を、二つの観点から問題視した。

 一つは、国が08年を算定の起点としたこと。原油などの価格が高騰した年で、下落幅を大きくみなすことにつながった。

 二つ目は、総務省が公表する消費者物価指数(CPI)ではなく、生活扶助の対象ではない家賃や医療費などを除いた厚労省独自の指数を用いたことだ。その結果、生活保護世帯では支出が少ないAV家電などの価格下落が増幅して反映され、総務省のCPIを使った場合と比べて削減幅が過大になったと認定した。

 審議を重ねていた有識者の会合でも「デフレ調整」は議論されておらず、厚労省が突然持ち出した。判決が「統計の客観的な数値に向き合い、専門的知見に基づいて分析すれば、(生活保護受給世帯の実態とは異なることを)探知できた」としたのも当然だろう。

 当時は、売れっ子お笑い芸人の親族の生活保護受給をきっかけに、「生活保護たたき」の風潮が広がっていた。野党だった自民党は12年末の衆院選で、「自助・自立」の旗のもと、生活保護給付水準の1割カットを公約に掲げ、政権復帰直後の予算編成で「デフレ調整」が採用された。

 判決はそうした経緯には触れなかったが、厚労省の独自指数が使われたのはこの時だけ。政治への配慮から不自然な引き下げが行われたのは明らかだ。

 コロナ禍で重要性が再認識されている生活保護は、就学援助最低賃金などにも連動・参照される「公助」の要である。政権与党が求めたからといって、客観性や公平性、透明性を欠いた政策変更は許されない。その当たり前のことを確認、徹底しなければならない。

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