(社説)入管法改正案 これでは理解得られぬ

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 政府が先ごろ出入国管理法の改正案を国会に提出した。

 不法残留などの理由で強制退去処分となった外国人が、送還されるまで入管施設に長期間収容される事例が近年急増し、大きな問題になっている。

 法案はその解消を図るものだが、評価できる点がある一方、人権擁護や適正手続きへの配慮を欠く規定も目につく。前後して野党も独自の改正案を提出した。国会で議論を深め、国際標準に照らして恥ずかしくない制度にしなければならない。

 19年末時点で入管に収容されていた1054人のうち、4割強は期間が6カ月以上に及び、2年以上の人も197人いた。

 日本に家族がいる。故国が受け入れない。難民認定のための手続きが進行中で送還できない――など事情は様々だが、長期収容に抗議するハンストが広がるなど、見過ごせない事態になっている。その後、コロナの感染防止対策で、一時的に拘束を解く「仮放免」が増えるなどの変化はあったが、根本的な解決にはなっていない。

 政府案で注目されるのは、難民認定在留特別許可の結果が出るまで、親族らの監督を受けながら施設外でくらすことを認める「監理措置」の創設だ。

 強制退去とすべき疑いがある者は全ていったん収容するという原則は緩和されるが、仮放免同様、この措置を認めるか否かの基準はあいまいで、当局の広い裁量に委ねられる。

 国連の機関は2人の外国人男性の申し立てを受けて昨秋、日本の入管による長期収容は国際人権規約に反すると述べ、収容の当否を裁判所が審査することや収容期間に上限を設けることを求めた。だが政府案にはいずれも盛り込まれていない。

 逮捕や勾留は裁判所の令状に基づいて行われる。入管施設への収容も自由を拘束する点で違いはない。恣意(しい)的な運用にならないよう司法の判断を介在させることは、外国人の権利保障はもちろん、入管行政に対する信頼の醸成にもつながると発想を切りかえるべきだ。

 政府案には「難民認定の手続き中は送還しない」とする規定の見直しも盛り込まれた。3回目以降の申請については原則としてこのルールの適用外にするというが、申請を重ねるなかで認定されたり、在留を認められたりした例も多い。安易な送還は取り返しのつかぬ事態を招きかねず、懸念を拭えない。

 独仏なども回数制限を設けていると政府は説明する。だがこうした国々は初回の審査で難民と広く認定しており、格段に壁が高く不信をもたれている日本と同列には論じられない。国際社会の理解は到底得られまい。

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