(10代の君へ)誰かの一言で道が開けるかも ブレイディみかこさん

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 高校時代はずっと疎外感がありました。出身は福岡市です。藩校の流れをくむ名門高校に進みました。エリートっぽい雰囲気の同級生が多くてね。貧乏で家庭環境が複雑だった私は、浮いた存在だったと思います。

 学校と決定的に衝突したのは高1の夏。禁止されているアルバイトがばれたのが、きっかけでした。放課後、定期代を稼ぐためにスーパーで働いていたんですが、担任に「今時、そんな貧しい家があるか。遊ぶ金ほしさだろう」と一蹴されました。

 理不尽な対応が悔しくて、その晩、髪を短く切って金色に染め、翌日、その格好でわざと遅れて登校しました。担任への抗議のつもりでしたが、母親が学校に呼び出され、完全に「問題児」として扱われるようになりました。

 行き場を失いかけていた私の2、3年の担任を引き受けてくれたのが、現代国語の先生です。嫌いな教科は勉強する気が起きず、試験用紙の裏に英国ロックやアナキズムの感想を書いて提出していた私を、なぜか先生だけは認めてくれたんです。

 「たくさん本を読め。君は、ものを書く人になるといい」。落ちこぼれだった私に先生がかけてくれた一言を、いまも鮮明に覚えています。「物書き」という仕事を意識したのは、そのときが初めてでした。

 私がまわり道をしながらもライターの仕事を続けられているのは、間違いなく先生の言葉があったからです。いまの10代のみなさんにも、そうした出会いを経験してもらいたい。信じられる大人がまわりにいないとしたら、名作といわれる本や映画に触れてほしい。私は、入り浸っていた高校の図書館で大正期の活動家の著作を読み、「こんなに奔放に生きた大人がいたんだ」と目を開かされました。

 学生時代は社会との接点が少なく、自分の可能性に気づけないかもしれません。でも、若いころに思っていた以上に世界は広く、多様な生き方を選べる。私はそう信じています。(聞き手・土屋亮)

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 ぶれいでぃ・みかこ ライター。1965年、福岡市生まれ。福岡県修猷館高校を卒業後、日英を往復し、96年に英国に移住。託児所で働く傍ら、ブログでの発信を続けてきた。著書に「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」など。

オススメの映画

 「いまを生きる」

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 アメリカ東部の名門高校を舞台に、かた破りな英語教師と生徒たちの交流を描きます。机の上に生徒を立たせ、違う視点で教室をながめさせるシーンが印象的です。

連載10代の君へ

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