(社説)柔道パワハラ 山下会長の見識を問う

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 一競技団体の振る舞いとしても不適切極まりない。ましてそのトップが日本オリンピック委員会(JOC)の会長とあっては、日本スポーツ界の後進性を世界に発信することになる。直ちに対応を見直すべきだ。

 全日本柔道連盟の幹部職員がパワハラと疑われる行為を繰り返していたことがわかった。ところが山下泰裕会長は連盟のコンプライアンス委員会から調査結果の報告を受けながら、懲戒のための手続きを進めず、この幹部の自己都合による退職を認めた。理事会にも調査結果は示されず、職員らへの説明も行われていないという。

 会見した山下氏らによると、この措置は正副会長5人だけの協議で決めた。およそ社会に理解される行いではなく、組織の長としての見識が疑われる。

 全柔連では約8年前、女子の代表候補15人が指導者のパワハラを告発し社会問題になった。選手側は、連盟には隠蔽(いんぺい)体質があるとしてJOCによる調査を要望。信頼関係がないことが明らかになり、公益法人改革に取り組む内閣府が事実上の体制一新を勧告する事態に発展した。

 その後再建が図られ、17年6月には山下氏が副会長から会長に昇格した。だが昨年2月、不祥事の公表基準を大幅に後退させる方針を打ち出し、批判を浴びた。今回の判断もその延長線上にあるといえよう。スポーツ団体にも適切な情報開示が強く求められる時代に、いったい何を考えているのか。

 深刻なのは、これが「全柔連の相変わらずの混乱」では片づけられないことだ。

 五輪招致をめぐる買収疑惑で竹田恒和氏が19年6月にJOC会長を辞任し、その後を継いだのが山下氏だ。国際オリンピック委員会の委員でもある。情報公開への取り組みも含め、全柔連は五輪に参加する国内競技団体の手本にならなければいけないはずなのに、やっていることはまるで逆だ。ここでも五輪イメージは大きく傷ついた。

 ふり返れば山下氏はJOC会長に就任してすぐに、反対を押し切って理事会を全面的に非公開とする決定をし、先月の東京五輪組織委員会の後任会長選びでも、候補者検討の協議を秘密で行うことを主導した。

 いずれについても自由な議論を保証するための非公開だと説明する。密室でなければできない議論とは何なのか。そんな姿勢で、東京五輪への懐疑的な見方を押し返し、逆に理解と共感を広げることができるのか。胸に手を当てて考えるべきだ。

 選手時代の実績もあり、氏の一挙手一投足に注目が集まる。リーダーとしての自覚を持って行動するよう、強く求める。

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