(社説)所有者不明地 問題の重さを共有して

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 東日本大震災の後、復興の障害になったひとつに「所有者不明土地」がある。

 持ち主が誰か、どこに住んでいるのか分からない。個人の財産を国や自治体が勝手に処分するわけにいかず、作業が滞る。被災地に限った話ではない。全国の土地の約2割は所有者とすぐに連絡がつかない状態にあるとされ、再開発や公共事業を進める際の壁になっている。

 問題の解決をめざして民法の改正案などがこの国会で審議される。土地の登記や共有・利用に関するルールを見直すもので、政府が閣議決定した。

 趣旨に異論はないが、登記の手続きが面倒で費用もかかる現状を改めなければ、状況の改善は遠い。市民の立場に立った総合的な施策が必要だ。

 登記は第三者に権利を主張するために行われるもので、売買によって所有権が移転した場合はともかく、一般の相続では放置されることが珍しくない。

 法案では、相続登記について現在任意の届け出を義務化し、違反には過料の制裁を科す。所有者の住所や氏名が変わった場合も同様にする。あわせて、遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続人である旨を申告すれば義務を果たしたものと扱う簡易な方法を新設する。

 利用者・市民にとって、土地の価格に応じて納める登録免許税戸籍謄本をはじめとする必要書類をそろえる手間、手続きを委任する専門職への報酬などが、登記を見送る大きな原因になっている。登録免許税は22年度の税制改正で見直す方向とされるが、それも含め、国ができる負担軽減策に積極的に取り組む必要がある。

 このほか政府案には、▽所有者不明土地について、裁判所が選任した管理人が、裁判所の許可を得て売却できるようにする制度を設ける(不明者分の代金は供託)▽相続で得た土地を手放したい場合、10年分の土地管理費を納付することを条件に、国庫に帰属させることを認める――なども盛り込まれた。

 「国庫帰属」の申請があると国から地元自治体に伝えられ、協議がまとまれば自治体への寄付扱いになり、申請者側の費用負担は軽減されるという。土地が所有者不明状態になるのを未然に防ぎ、まちづくりにも役立つことになれば意義深い。

 不動産ならぬ「負動産」という言葉が生まれ、土地所有を負担と感じる人が4割を超えるとする調査結果もある。しかし管理がおろそかになると、隣接する土地の持ち主やそこで暮らす人たちにも迷惑が及ぶ。

 法案審議を、この問題の重さを共有し、今後のあり方を社会全体で考える機会としたい。

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