(社説)大臣規範 抜本見直しで実効性を

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 利害関係者から接待を受けると、官僚は国家公務員倫理規程違反で処分の対象となるのに、大臣など政務三役は、国民の疑惑を招く会食ではないなどと言い逃れる。公職にある者の「清廉さ」や「政治的中立」を掲げた大臣規範は有名無実であると言わざるを得ない。

 菅首相の長男が勤める放送関連会社に端を発した総務省への接待問題が、官僚から政治家へと広がった。自民党野田聖子幹事長代行や高市早苗衆院議員が総務相時代にNTTの澤田純社長らと食事をしていたことが明らかになったのに続き、現職の武田良太総務相も澤田氏との会食での同席を認めた。

 大臣規範は関係業者からの「供応接待」を禁じている。野田、高市両氏は今になってNTT側が負担した飲食代を返金したが、会合は「懇談会」「意見交換」であり、接待には当たらないという。1万円を払ったという武田氏も、許認可などの要望や依頼は受けておらず、大臣規範には抵触しないと述べた。

 いずれも納得しがたい。費用を相手がもったら、それは接待ではないのか。実際の働きかけの有無ではなく、特定の業者の誘いに応じること自体が、行政の公平性に対する疑念を招くのではないか。

 こんな弁明がまかり通るのも、大臣規範の規定のあいまいさゆえだ。「供応接待を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」という文言だから、国民の疑惑を招くような会食でなければいいという手前勝手な解釈を許すことになる。

 同様の問題は政治資金パーティーにもいえる。「大規模なもの」は自粛するとあるが、参加人数やパーティー収入などの目安は示されていない。閣僚によるパーティーは常態化しており、例えば菅首相は官房長官だった19年に計9回開催し、7719万円の収入を得ている。

 何が規範違反にあたるのか、その判断が政治家個々人に委ねられており、罰則もない。これではとても、政治や行政への国民の信頼の確保という規範の目的は達成できない。

 大臣規範は01年の省庁再編の際、副大臣や政務官として多くの与党政治家が新たに政府入りすることを契機に閣議決定された。当初から、参考にした英国の規範に比べ規制が緩く、内容もあいまいと指摘されてきた。

 政治主導の流れは、その後、一層強まり、政策決定に対する大臣の影響力も増している。政府の公職に就く政治家には、より厳しいモラルが求められる。この機会に、菅首相には、実効性のある大臣規範への抜本的な見直しを求める。