(社説)ネット通販新法 市場の信頼どう育てる

[PR]

 インターネットを介した通販トラブルが増大・深刻化しているのを受けて、政府は消費者保護を図るための新しい法案をこの国会に提出している。

 ネットの使い勝手が悪くなると、かえって人々に不利益をもたらすとの声も根強く、法案は総じて規制色を抑えた内容になっている。技術の進歩や国際的な動向も見すえながら、どんな社会的合意を形づくっていくべきか。国会には将来につながる審議を望みたい。

 注文した商品が送られてこない。粗悪品が届いた。なのにデジタルプラットフォーム(DPF)と呼ばれる、売買の場を運営する企業に訴えても、当事者間で解決すべき問題だとして応じてくれない。そんな苦情が消費者の相談窓口に相次ぐ。コロナ下の巣ごもり需要もあり、ネット通販全般に関する20年度の相談は26万件を超えた。

 新法案はDPF側に対し、▽消費者が出店業者と円滑に連絡をとれるようにする▽苦情が寄せられれば、その業者について必要な調査をする▽業者に身元確認のための情報提供を求める――などを義務づけている。ただし「努力義務」にとどまり、従わなくても制裁はない。

 アマゾンや楽天のような大手から小規模なサイトまで、DPFは多種多様で対応力に違いがあることや、業界の自主的な取り組みを促すとの立場から、罰則の導入は見送ったという。しかしそれで実効性があるのか。消費者団体などから疑問の声が出るのはもっともだ。

 取引の仲介で収益をあげながら、トラブルの解決に真摯(しんし)に向きあわない。そんな姿勢で社会の理解を得られるはずがない。出店時の審査から事後の手当てまで相応の責任を引き受けてこそ、市場への信頼が生まれ、発展につながると認識すべきだ。

 法案には、悪質な出店業者への対策などを話しあうため、行政、業界、消費者団体で官民協議会を設けることも盛り込まれた。被害に即応できるよう、そのあり方や運用についても議論を深めてほしい。

 ネット通販に関しては、初回だけのお試し購入と思わせて複数回の契約を結ばせる「定期購入商法」も横行していて、業者の厳罰化を図る特定商取引法の改正案が別途提出されている。社会のデジタル化を進める大前提として、安心安全な取引環境の整備があることを、政府は肝に銘じなければならない。

 消費者庁の有識者会議は新法を「橋頭堡(きょうとうほ)」と位置づけ、消費者保護の充実に向けたさらなる対応を求めている。この先も技術の革新やそれに伴う様々なトラブルが予想される。実態に即した見直しが欠かせない。

連載社説

この連載の一覧を見る