(社説)エネルギー企業 脱炭素へ率先して動け

[PR]

 気候危機を克服するため、森林吸収分などを差し引いた実質的な温室効果ガスの排出を2050年にゼロにする。菅政権が掲げるこの目標達成には、電力、ガス、石油などのエネルギー企業が脱炭素へ動くことが欠かせない。現在の排出量の8割を、エネルギーの使用にともなう二酸化炭素(CO2)が占めるからだ。

 東京ガスはおととし、供給先も含め、50年にCO2排出を実質ゼロにする方針を打ち出した。原動力になったのは、30代中心の若手社員の存在だ。

 自らがまだ働いている30年後に会社を存続させるには、想定できるシナリオを積み上げるだけで足りるのか。30人が議論の末、エネルギー企業こそが年限を切って、脱炭素に向けて技術を総動員すべきだと、内田高史社長に訴えたという。

 燃やしてもCO2が出ない水素を、家庭用燃料電池の技術を活用して低コストでつくり、さらに都市ガスの主成分であるメタンに変える。ガス導管など今ある設備を生かせるため、社会全体のコストの増大を防ぎながら普及できるとみる。

 50年の脱炭素シナリオを発表した大阪ガスも、CO2排出実質ゼロでメタンをつくる研究を進めており、大阪・関西万博での実証実験などを予定する。

 東京、中部両電力の火力発電部門を統合したJERAも、50年に国内外での実質ゼロをめざす。天候などで発電量が変動しやすい再生可能エネルギーの調整電源として、アンモニアや水素を混ぜた石炭火力発電を実用化。40年代にはアンモニアだけを燃料に、CO2を出さない火力発電所も計画する。

 石油元売りのENEOSホールディングスは、40年に自社の事業で直接排出されるCO2を実質ゼロにする目標を掲げた。経営陣の意識向上を促すため、一部の役員報酬の評価指標に昨年6月、CO2削減量を採用した。

 エネルギー企業は長らく、安定供給で暮らしや経済を支えてきた。今後は利用者が温暖化防止の努力に参加できるよう、有効な脱炭素の選択肢を提供することも責務に加わったと、覚悟を新たにすべきだ。

 ただ、利益の源泉であり続けてきた化石燃料からの脱却は容易ではない。政策で変化を促すことも求められる。炭素に値段をつけ、排出を減らすほど得をするカーボンプライシングは有力な選択肢だ。炭素税なら、税収をエネルギー企業の技術開発支援に充てることもできる。

 脱炭素社会は一足飛びには実現できない。エネルギー企業は着実な努力で、新しい社会に向けた歩みをリードしてほしい。