(社説)若手官僚離れ ゆがんだ政官への警鐘

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 若者の官僚離れが加速している。国家公務員採用試験で総合職の2020年度の申込者数は2万人弱と、ピークの1996年度(4万5254人)から半分以下に減り、倍率も28・6倍から9・5倍に下がった。

 退職する若手も18年度以降、急増している。19年度の20代総合職の自己都合退職者は104人で、13年度(25人)の4倍以上にのぼる。日本全体でみれば20代の離職率はここ10年間ほぼ横ばいで、若手官僚の退職の増加は際立っている。

 もはや官主導で動く時代ではなく、優秀な人材が民間で働くこと自体を否定する必要はない。ただ、コロナ対策では、行政の対応の遅れが目立つ。今国会では、法案や条約のミスも続出している。行政の質の低下が進むのを、見過ごすわけにはいかない。

 職場の魅力を取り戻そうと、内閣人事局が力を入れるのは、長時間労働の見直しである。昨年10、11月には若手総合職の3割が、過労死ラインとされる月80時間以上、時間外に役所にいたという。民間企業では働き方改革が進んでおり、官庁でも効率化を図ることが不可欠だ。まずはパソコンの起動時間などで勤務時間を正確に把握し、サービス残業をなくす必要がある。

 硬直的な各省庁の人員配置も見直すべきだ。社会保障改革など重要政策が集中する厚生労働省の昨年度末の定員は、コロナ下で増員されたが、10年前より2%増にとどまる。過労で職員が倒れる事態は放置できない。

 財政難のなか、公務員全体の人員を増やす余裕はない。あらゆる業務をゼロベースで再検討し、必要性が乏しければ廃止・縮小に踏み切るべきだ。

 忘れてならないのは、長時間労働が官僚の士気低下の主因ではないことである。内閣人事局のアンケートでは、若手男性が退職したい理由で、「長時間労働」は3番目にとどまる。自身が成長できる職場と思えなくなったからこそ、若者は官の世界から離れているのではないか。

 安倍政権から続く強権的な官邸主導の下、自由闊達(かったつ)な議論が失われたと、省庁幹部の多くが口をそろえる。菅首相が推進するふるさと納税をめぐっては、制度の拡充に反対した総務官僚が左遷された。安倍前首相の妻の関与が疑われた森友学園問題では、財務省が決裁文書を改ざんし、自殺者まで出た。

 専門知に基づく意見は言えず、良心にもとる行動を強いられる。そんな状態が続けば、士気が低下するのは当然である。若手官僚の退職増は、ゆがんだ政治主導への警鐘であると、首相をはじめ政権幹部は肝に銘じなければならない。

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