(社説)都構想と維新 「否決」の重み忘れるな

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 いまの行政の枠組みを変えることは、基本的に認められない――。それが、都構想を2度にわたって否決した大阪市民の明確な意思だった。

 にもかかわらず、大阪維新の会は民意を都合よく解し、都構想の簡易版とも言うべき改編を進めている。新たな看板政策を見いだせないまま、市民の判断よりも自分たちの求心力の維持を優先させる党利党略とのそしりを免れない。

 大阪府と市の「一元化条例」が双方の議会で成立し、今月1日に施行された。広域の成長戦略都市計画の一部を、市から府に委託するのが柱だ。

 国から地方へ、都道府県から市区町村へと、権限を移してきた地方分権の流れに逆行する内容だが、維新が提唱し、公明の賛成を取りつけた。

 維新がこの条例を制定する方針を表明したのは、昨年11月の住民投票の直後だった。松井一郎市長と吉村洋文府知事は、賛否は拮抗(きっこう)していたとして、かつて大阪で見られた府と市の二重行政は解消すべきだという民意が示されたとコメント。首長が代わってもこの流れが後戻りしないよう、条例で縛る必要があると主張した。

 たしかに府市間での住民不在の不毛な対立は願い下げだ。まちづくりなど一定の分野については、司令塔を一本化することが理にかなう場合もある。

 だとしても、ずいぶん身勝手な総括ではないか。透けて見えるのは、改革に取り組んでいる姿勢を見せて支持をつなぎとめ、大阪政界での主導権を握り続けようという思惑だ。

 衆院選を控えて維新との対立を避けたい公明が、府に移管する権限を絞ることなどを条件に賛成に回った。新条例の下でどんな動きがあるかは今後を見なければならないが、条例にも書かれているように、府と市はあくまでも対等の立場で協議を尽くすことが求められる。

 維新は別途、大阪市の24の行政区を八つの「総合区」に再編する条例案を用意した。16年施行の改正地方自治法で導入された仕組みで、いまの行政区より権限と財源の自主性が強まる。

 大阪市廃止を掲げた都構想を退けた住民の思いには、現行の24行政区への愛着も込められていたと考えるのが自然だ。それを踏みにじるばかりでなく、コロナ禍で職員が忙殺され対策費もかさむなか、多大な労力と費用を要する制度変更を急ぐ必要があるとは到底思えない。条例案は今春の議会提案が見送られたが、白紙に戻すべきだ。

 住民投票で示された「民意」に誠実に向き合う。それこそが政治の基本だ。維新は忘れてはならない。

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