(社説)広島再選挙 自民のけじめはどこに

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 民主政治の土台である選挙の公正を害した前代未聞の大規模買収事件だというのに、疑念の解消も党としてのけじめも不十分なままだ。菅政権への評価や候補者個人の資質とともに、自民党の姿勢が厳しく問われる。

 公職選挙法違反の有罪が確定した河井案里氏の当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙がきのう告示された。参院長野選挙区の補欠選挙と、13日に告示される衆院北海道2区補選とともに25日に投開票される。

 菅首相になって初の国政選挙であり、秋までに必ず行われる衆院選の前哨戦でもある。長野補選は立憲民主党羽田雄一郎氏の急逝によるものだが、北海道2区補選は、収賄罪在宅起訴された吉川貴盛農水相の議員辞職を受けたものだ。三つの選挙のうち二つまでが、自民党議員の「政治とカネ」絡みであることを、自民党と菅政権は重く受け止めねばならない。

 しかし、深い反省にたち、政治への信頼を取り戻すために、疑惑の解明に努めたり、実効性のある再発防止策を講じたりという姿勢はうかがえない。

 案里氏の夫で元法相の河井克行前衆院議員の公判を、二階俊博幹事長が「他山の石」と評したように、目につくのはむしろ、人ごとのような態度だ。離党した者のことはあずかり知らぬというのなら無責任極まる。

 克行前議員は県議ら100人に計約2900万円を配ったとされる。焦点はその原資だ。

 克行前議員は今週になって初めて、「手持ち資金」だと、公判の中で説明した。自民党本部から夫妻側に渡された1億5千万円は「機関紙配布や人件費などに使った」として、買収とは無関係と証言したが、それを裏付ける記録などが示されないままでは、うのみにはできない。

 当時の安倍政権による異例のテコ入れが事件の背景にある。安倍氏とともに、官房長官として案里氏を全面支援したのが他ならぬ菅首相である。その責任の重さを自覚するなら、率先して信頼回復に取り組むべきだ。

 今回の選挙違反事件では、カネを受け取った側の刑事責任は問われていない。辞職した首長もいるが、自民党県連所属の県議と広島市議計24人は現職のままである。さすがに表だった選挙活動は控えるだろうが、後援会などを使ったさまざまな支援は可能だ。「金権政治」ときっぱり決別できるのか、このままでは心もとない。

 自民党候補を推薦し、全面支援する公明党は、かねて「クリーンな政治」の実現を標榜(ひょうぼう)してきた。その看板に偽りがないというのなら、自民党に対して明確にけじめを求める姿勢を忘れてもらっては困る。