(社説)普天間合意25年 負担軽減の原点に戻れ

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 四半世紀たっても果たされない「約束」とは何なのか。日米両政府はこれ以上、展望のない現行計画に固執することをやめ、合意の原点に立ち戻って、真剣に打開策を検討すべきだ。

 住宅地の真ん中にあり、「世界一危険」ともいわれる沖縄県の米軍普天間飛行場の全面返還を日米両政府が発表してから、12日で25年となる。

 米兵による少女暴行事件を契機に、米軍基地の集中に苦しむ沖縄の人々が怒りと抗議の声をあげ、本土復帰以降最大規模となる県民大会も開かれた。日米安保体制を揺るがす事態に危機感を抱いた両国の当局者が、負担軽減の象徴としてまとめたのが普天間の返還合意だった。

 当時、「5~7年以内」とされた返還がいまだ実現していないのは、抑止力を維持するためとして、県内に代替施設をつくることが条件だったからだ。

 日本側が期待した嘉手納基地への統合案は早々についえ、名護市沖の海上ヘリポート案を経て、最終的に決まったのが辺野古沖を埋め立ててV字滑走路をつくる今の計画である。しかし、軟弱地盤の発覚で工期も延び工費もかさむことから、もくろみ通りにいっても返還は早くて2030年代半ばとされる。

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)も、「完成する可能性は低い」とする報告書を公表している。もはや新基地にこだわらず、軍事技術の進展や安全保障環境の変化に応じた戦略の見直しを通じ、海兵隊の分散など、実現可能性の高い方策を探るべきではないか。

 この間、この難題に向き合った首相は11人になる。合意をまとめた故橋本龍太郎氏や、沖縄でのサミット開催を決めた故小渕恵三氏ら、沖縄の苦難の歴史に思いをはせ、対話に心を砕いた首相もいた。しかし、第2次安倍政権以降の8年余は、知事選や県民投票で繰り返し示された辺野古ノーの民意を顧みることなく、問答無用のごり押しが続く。官房長官、首相として、一貫して意思決定の中枢にいた菅首相の責任は極めて重い。

 その菅氏は来週、訪米してバイデン米大統領と初の対面での首脳会談に臨む。軍事的、経済的に台頭する中国に向け、日米同盟のさらなる強化をアピールする考えだ。

 ならば一層、米軍基地を抱える地域住民の理解は必須である。普天間の危険性を除去し、沖縄の負担を軽減する。25年前の合意の原点を、首脳同士で確認するところから再出発してほしい。バイデン政権は、中国の権威主義に対し、民主主義の価値を前面に掲げる。民意を無視した辺野古強行で民主主義の価値をおとしめてはいけない。

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