(社説)デジタル法案 個人情報を守れるのか

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 個人情報の取り扱いの枠組みを大きく変える法案が衆院を通過し、参院に送られた。

 政府がめざす新しい制度でプライバシーは守られるのか。個人情報の保護に長年取り組んできた自治体の努力と蓄積を無にすることにならないか。様々な懸念があるなか、衆院は拙速ともいえる審議で可決してしまった。問題の解消に向けて参院に期待される役割は大きい。

 法案は菅首相肝いりのデジタル改革関連法案の一部で、▽政府、独立行政法人、民間向けと別々に制定された個人情報保護の法律を一本化する▽各自治体の条例を「リセット」(平井卓也担当相)し、全国共通のルールに統一してシステムも共同化する、などが柱になっている。

 情報を保有する主体によって取り決めが異なる弊害は、かねて指摘されてきた。災害時の救助や医療の場面で、関係機関が円滑に情報をやり取りできなければ生命にもかかわる。

 だが、この法案で政府がめざす情報のデジタル化と一括管理は、はるかに巨大なものだ。民間ビジネスでの活用も含め便利になることもあろうが、統合・把握された多様な個人情報が悪用される恐れは拭えず、漏洩(ろうえい)した時の影響も計り知れない。

 それなのに衆院での審議は全体で30時間にも満たなかった。立憲民主党は、行政機関がもつ個人情報を目的外で利用する際の要件を絞るなどの修正案を提出したが、否決された。政府に厳格な運用を求める付帯決議はついたものの、法的な縛りはなく、いかにも心もとない。参院で是正すべきだ。

 法施行後、それぞれの組織で情報が適切に扱われているかどうかの監視・監督は、内閣府の外局の個人情報保護委員会が一手に担うことになる。

 しかし委員会は、行政機関に指導・助言や勧告はできても、改善命令を出す権限はもっていない。民間部門に対する場合と同様、立ち入り検査権なども付与して有効に機能する仕組みにしなければならない。独立性、専門性への要請がいっそう高まるなか、現在約150人の体制の強化も不可欠だ。

 全国の条例の「リセット」に関しても危惧がある。

 自治体が政府に先行して取り組んできたのが個人情報保護の歴史だ。それを国基準にそろえさせるのは、地方自治の理念に逆行する。生活保護やDV被害者の状況など、自治体にはとりわけ慎重に扱うべき個人情報が多く、独自の施策に必要な情報もある。国の都合で統合を急ぐと混乱は避けられない。

 住民本位の視点を大切にしてきた自治体の実践から学ぶ。そんな姿勢が国には求められる。