(社説)ワクチン確保 中長期見据えた戦略を

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 65歳以上を対象とする新型コロナワクチンの接種が始まった。約3カ月で1人2回の接種を終える計画を達成するには、依然として課題が多い。国と自治体は連携を密にして、着実に取り組んでもらいたい。

 接種の進め方は自治体ごとに異なり、それぞれ長短がある。安全かつ効率よく実施するにはどんな方法が適切か。地域の事情に応じて工夫を重ねるのはもちろん、情報共有に努め、他の実践例も参考にしてほしい。

 当面の最大の課題の一つは、医師や看護師、そして会場の確保だ。医療従事者への優先接種は2月に始まったが、2回の接種が完了したのは、約480万人いる該当者の約1割に過ぎない。高齢者への接種が同時進行になることで支障が生じないか、注視する必要がある。

 国が進捗(しんちょく)状況を管理する二つのシステムへのデータ入力も軽視できない。全国市長会が市と特別区に行ったアンケートで、回答した約7割がこの事務作業の負担を医療機関とどう調整するかを課題に挙げた。そうした声に耳を傾け、適宜改善していくことが政府に求められる。

 そして何より懸念されるのがワクチンの確保だ。国産化のめどは立っておらず、当面は海外からの輸入に頼るしかない。

 高齢者向けワクチンは6月末までに全量調達できる見通しだと政府は説明する。だが自治体に配布される明確な時期や量は不明のため、現場は作業を進めていいのか、なお様子を見るべきかのジレンマに陥っている。

 かつて政府は、今年前半までに「全国民分のワクチン確保をめざす」としていたが、実現は難しそうだ。先進国の中で日本の遅れが顕著で、国民の間に不満や疑問が広がる。

 各国間で争奪戦が展開され、計算通りにならないこともあるだろうが、確実に交渉を進め、状況を人々にていねいに説明することが肝要だ。

 季節性インフルエンザのように、この先、定期的にワクチンを接種しなければならない事態も考えられる。必要量を用立てる国内体制の構築を含めた長期戦略が欠かせない理由だ。

 有力な外国製ワクチンがあるなか、国産ワクチンの実用化に必須の臨床試験をどう行い、有効性と安全性を確認するか。外国のものを、さらにライセンス生産することは可能か。様々な選択肢とそのメリット・デメリットを考慮して、国が講ずべき施策を探る必要がある。

 ワクチンの副反応が深刻な社会問題となった経験があり、国民の理解を得て、どう合意を形成していくかは長年の課題になっている。今回の災厄を、議論を深める一つの契機にしたい。

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