(社説)学術会議改革 任命問題の決着が先だ

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 日本学術会議が組織や運営の見直しに向けた「素案」をまとめた。21日から開く総会で議論し、正式決定する予定だ。

 制度の欠陥や不都合を正し、時代の要請に応える機関にするための改革はもちろん必要だ。だがその前に決着させなければならない問題がある。

 言うまでもない。学術会議が推薦した会員候補のうち6人の任命を菅首相が拒否し、「会議は210人の会員で組織する」という法律の規定に反する状態が続いている問題だ。

 国家が研究活動に介入し戦争に動員した反省に立って、憲法は学問の自由を保障している。そして、「特別の機関」として戦後設立された学術会議について、政府は「推薦された者をそのまま会員として任命する」旨の国会答弁を繰り返し、会議の独立性・自主性を尊重すると国民に約束してきた。

 首相はそれを覆し、説得力を欠く発言を重ねた。拒否の理由を明らかにするよう求める声に対し、NHKの番組で「説明できることと説明できないことがある」と述べた。為政者は説明できないようなことをするべきではない。

 人事で組織を思い通りにしようとする。説明しないことで疑心暗鬼を生じさせ、忖度(そんたく)をはびこらせる。議論を交わして理解を得る努力をせず、国会を軽視する――。安倍政権から続く体質を象徴する振る舞いだ。

 学者が萎縮すれば学問の自由は成り立たない。首相の言動に世論の批判が強まると、政府与党は学術会議の改編を持ち出して論点のすり替えを図り、不信をいっそう深めた。

 今回、学術会議は改革の「素案」をまとめたものの、任命拒否を受け入れたわけではない。総会でも問題の解決を求める決議がされる予定だ。

 この間、前政権時代に学術会議側が官邸の意向に沿い、定員を上回る人数を会員候補として示すなどしていたことがわかった。国会答弁を逸脱する要求に応じたことが、任命拒否を生んだともいえ、当時の執行部の対応に疑問が寄せられている。梶田隆章会長が厳正な姿勢で臨む考えを示したのは当然だ。

 喫緊のテーマである感染症対策にとどまらず、環境破壊気候変動、格差・分断の拡大など難題が山積し、広い視野で科学的・専門的知見をもつ人々と政治部門との協働が、これまで以上に必要とされている。

 日本の学界を代表する学術会議の英知を社会に生かすことが求められるまさにその時に、不正常な事態が続くのは国民のためにならない。首相が任命拒否を撤回することから、関係の再構築を図るべきだ。

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