(社説)フジ外資違反 放送行政への不信深く

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 放送行政に対する疑念と不信は深まるばかりだ。信頼の回復に向けて、まず事実関係を速やかに明らかにする必要がある。

 フジテレビなどを傘下に置く認定放送持ち株会社フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)が、12年9月から14年9月まで、放送法が定める外資規制に違反する状態を続けていたことが明らかになった。

 きのう同社の金光修社長が衆院総務委員会に参考人として出席し、株式の議決権総数を計算する際に事務的なミスをしていたと説明・陳謝した。長期にわたって法を犯していた事実は重いが、超過分はごくわずかであり、計算ミス自体は比較的軽微な過失といえよう。

 納得できないのは、14年10月末ごろに違反に気づいた後のフジHD、総務省双方の対応だ。

 放送法は、規制違反があれば総務相認定放送持ち株会社の認定を取り消さなければいけないと定めている。存続に関わる重大な話なのに、フジHDが報告したのは約1カ月後。その時点で違法状態は解消されていたため、総務省は口頭で厳重注意するにとどめたとされる。

 ところが、この時のやり取りを記録した文書や決裁記録を、双方とも残していないという。同省は、40年前に内閣法制局に相談した際に示された法解釈を踏まえて、認定取り消しの処分はしなかったと説明するが、その「相談」を裏づける文書の存否も明らかでない。さらに、一連の経緯を当時の高市早苗総務相に報告しなかったという。

 こんな説明を誰がそのまま信じるだろうか。言い分を支える文書は存在せず、政治家は関知せず、「担当者限り」の世界に逃げ込む。森友・加計問題とも重なる異様さだ。

 事後のフジHDの処置もおかしい。数字の過誤は「微少」だと判断し、有価証券報告書に記載していた議決権総数の誤りなどを訂正しなかった。

 投資家や社会に対する説明責任をどう考えていたのか。外資違反の事実を隠すため、やるべきことをやらなかったと受け取られてもやむを得ないのではないか。社内でどんな議論をしたうえでの判断だったのか、プロセスを明らかにするべきだ。

 外資規制違反をめぐっては、東北新社の子会社が持っていた放送事業の認定を取り消す処分が出たばかりだ。フジHDのケースとは、何がどう違うのか、総務省から得心のいく説明がなされたとは言いがたい。

 表現・報道の自由と密接にかかわる放送事業の認定や規制の手続きが、恣意(しい)的に運用されることはあってはならない。社長の招致で幕を引くわけにはいかない、深刻な問題である。

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