(社説)大阪の危機 命を守る対策に全力を

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 医療機関と行政が連携・協力して、直面する危機を乗り切らなければならない。

 新型コロナウイルスの感染の広がりが止まらない。とりわけ大阪府の医療が深刻な状況に陥っている。

 重症患者の数が確保済みの病床数を超えた。本来ならばより設備の整った病院に移すべき重症者を、相応の態勢がとれている軽症・中等症者向けの病院に留め置くことなどで、何とかやり繰りしている状態だ。

 大阪府はコロナ患者を受け入れている約60の病院に対し、一般医療を一部とりやめて病床をさらに増やすよう要請した。救急医療の病院でも、患者受け入れの制限が始まっている。

 ベッドはあっても、治療にあたるスタッフや機材がそろわなければ機能しない。どこも厳しいだろうが、それでも多少余力のある自治体と国は、医師や看護師を派遣するなど、支援の手を差し伸べてもらいたい。

 新たな感染者を抑える取り組みも欠かせない。

 府は、飲食店への営業時間の短縮要請に続いて、小中高校に部活動の休止を、大学には講義のオンライン化を求めることを決め、さらに政府による3度目の緊急事態宣言の発出も視野に入れている。状況に応じて適切に手を打つことが肝要だ。

 大阪が短期間でこれほどの窮地に陥った原因のひとつに、感染力が強いとされる英国型変異株の拡大があるようだ。

 府によると、重症化するまでの期間が従来株より短く、重症になる率も高い傾向が読み取れるという。本格的な分析はこれからだが、東京をはじめとする他の地域でも英国型の広がりが報告されている。知見を踏まえて対策を急ぐべきだ。

 結果として、このような事態を招いた吉村洋文知事の責任は重い。昨年秋以降の第3波のときにも深刻な医療危機に直面しながら、その後どこまで有効な手立てを講じてきたか。追って検証が必要となろう。

 菅首相の認識と対応にも大きな疑問符がつく。

 14日の参院本会議で首相は「全国的な大きなうねりとまではなっていない」と述べ、第4波到来との見方に否定的な考えを示した。ところが15日になって、政府は首都圏3県と愛知県に新たに「まん延防止等重点措置」を適用する方針を決めた。

 国民が戸惑い、不安を感じないか。訪米、さらには東京五輪開催に影響が出ないよう、状況をことさら小さく見せようとしているのではないか。そんな疑いすら浮かぶ。

 人々にさらなる行動の抑制と忍耐を促さねばならないいま、政治指導者の資質が問われる。

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