(社説)香港の自由 物言えば厳罰の理不尽

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 あの日の午後、香港には雨が降っていた。

 色とりどりの多くの傘が、公園や通りを埋め尽くした。2019年8月18日。政府に抗議するために集まった市民は、170万人に上ったとされる。

 警察との大きな衝突はなく、デモは平和裏に行われた。その日、その場にいた誰もが知っている明白な事実である。

 ところが、香港の裁判所はこの日のデモは無許可集会であり、これを組織したり、参加したりしたことなどは罪に当たるとの判断を下した。

 きのう、香港紙創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に禁錮刑を科すなど、民主派の重鎮たちを厳しく罰する判決が一斉に言い渡された。

 言論の萎縮を狙った懲罰であり、香港の自由を揺るがす不当な政治弾圧である。断じて容認できない。

 19年以降の反政府デモに関係する逮捕者は、すでに1万人以上に上っている。多くの民主派のリーダーたちは海外に逃れたり、拘束されたりして、活動を封じられつつある。

 今年9月に実施する予定だった立法会選挙も、12月に延期される見通しになった。中国が3月に一方的に決めた選挙制度改変の手続きが、間に合わないための措置だという。

 元々は昨年9月に予定されていた選挙の再度の延期である。当局の都合を優先させる恣意(しい)的な選挙期日の変更は、民意を問う選挙の本来の目的に反するものだ。

 そもそも選挙制度改変により、民主派は立候補自体も難しくなるとみられている。

 立候補の資格を判断する審査委員会については、行政長官がメンバーを任命し、中国の国家安全部門の情報などを元に判定する。中国に批判的な過去の言動も、審査に影響するとの見方が強い。

 そのうえ、香港政府は組織的に白票の投票や無投票の呼びかけをする行為にも、刑事罰を科す条例案をまとめた。政府批判につながりうる、すべての民意の表明を徹底的に封じ込めようということらしい。

 「香港の状況はますます厳しさを増しています。でも、時が後戻りするかのような時代にこそ、我々はしっかりと顔を上げ、立ち上がるべきです」

 黎智英氏は最近、拘置所から新聞社の同僚たちに向けた手紙でこう訴えた。

 香港で自由が奪われ、強権と暴力によって民主主義の理念がないがしろにされている現状を世界の人々が憂えている。

 抗議の連帯を深めるときだ。あきらめることなく、国際社会の声をあげ続けるべきである。

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