(社説)慰安婦訴訟 判決を機に本格対話を

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 日本政府の主張にも沿う韓国の司法判断を契機として、日韓両政府は速やかに本格的な対話に乗り出すべきである。

 元慰安婦らが日本政府に賠償を求めた裁判で、ソウルの地裁は原告の訴えを退けた。

 ことし1月には同種の訴訟で原告が勝訴していた。二つの判決を分けたのは、国際法をめぐる解釈だ。国家には他国の裁判権が及ばないとする原則が、今回は認められた。

 同時に判決は、6年前に日韓両政府が結んだ慰安婦合意について、肯定的に評価した。被害者の4割強が、同意にもとづく支援金を受け取った事実などを挙げ、「権利救済」の手段としての意義を認めた。そのうえで韓国政府に外交努力による解決を促した。

 前回勝訴した原告側は、訴訟費用確保のために日本政府の資産差し押さえを求めたが、裁判所は「国際法違反の恐れ」を理由に認めなかった。これにより賠償の強制執行も困難になったとの見方が出ている。

 近年の韓国の司法では、日本との過去の問題において、韓国政府の見解とは必ずしも一致しない判決が目立っていた。ここ数日の判断は、その流れにブレーキをかけるかのようだ。

 文在寅(ムンジェイン)政権はこれまで、司法の尊重を理由に具体的な解決策の提案を控えてきた。その司法が行政府に行動を求めたのだ。慰安婦合意の価値を認め、責任ある決断をすべき時だろう。

 日米、米韓で開かれた外務・防衛の閣僚会合や日米首脳会談では、地域の平和と安定のために日米韓の協力が欠かせないことが確認された。

 危うい北朝鮮を抑制し、融和姿勢に導くためには、日韓が緊密に連携する方がはるかに効果的であるのは明らかだ。

 だが両国間には慰安婦問題のほかに、徴用工問題や、東電福島第一原発の処理水問題なども横たわる。これらを解決するうえでも、信頼関係を立て直す作業が求められる。

 韓国では次期大統領選が来年3月に迫っているが、文政権の支持率は低迷している。この状況では対日姿勢を軟化させられまい、と見る向きも多い。

 しかし、歴史問題に携わる関係者の多くは文氏の支持層だけに、現政権でなければ果たせぬ役割があるのも事実だ。

 一方、日本政府も、根深い歴史問題の解決には双方の不断の努力と誠意が欠かせないことを忘れてなるまい。

 新任の韓国外相や駐日大使を冷遇し、閣僚らへの表敬や会談を受けつけないという態度は、外交的に稚拙である。難題があればこそ直接話し合う成熟した隣国関係を心がけるべきだ。