(社説)自民3戦全敗 政権運営、反省の時だ

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 菅政権下で初となる三つの国政選挙自民党が全敗した。とりわけ前代未聞の大規模選挙買収事件を受けた広島での敗北は、金権政治に対する有権者の厳しい姿勢の表れに違いない。菅首相は一連の審判を重く受け止め、政権運営全般の反省につなげねばならない。

 きのう投開票された3選挙のうち、収賄罪に問われている吉川貴盛農水相の議員辞職による衆院北海道2区補選は、「勝ち目がない」とみた自民党が早々に候補者擁立を見送り「不戦敗」に。残る参院の長野選挙区補選と広島選挙区再選挙が与野党対立の構図となった。

 長野は急逝した立憲民主党羽田雄一郎氏の地盤を引き継いだ弟の立憲新顔が勝った。自民は長野の情勢も厳しいとみて、公職選挙法違反の有罪が確定した河井案里氏の当選無効に伴う広島に力を注いだが、野党共闘候補に及ばなかった。

 広島はもともと、衆院の7小選挙区のうち六つを押さえる「自民王国」である。地力の差がありながらの敗北は、事件へのけじめも疑念解消への取り組みも不十分な、自民と政権に対する有権者の強烈なしっぺ返しといえる。

 カネを受け取った自民党県連所属の県議と広島市議計24人は刑事責任を問われず、現職にとどまっている。選挙前に河井夫妻に渡した1億5千万円の使途の解明に、党本部が主体性を発揮した様子もない。再選挙の陣頭指揮をとった党広島県連会長の岸田文雄政調会長は、「自民党を変えていかなければならない」と訴えたが、真相解明と再発防止の具体策がなければ、信頼は取り戻せない。

 首相として初めて臨む国政選挙で、秋までに必ずある衆院選の前哨戦だというのに、首相が応援演説に出向くなど、先頭にたって支持や理解を呼びかける場面は最後までなかった。敗れた際の打撃を和らげたいという思惑からか。コロナ対応や米国訪問があったとはいえ、腰が引けた印象は否めない。

 有権者の判断材料は「政治とカネ」の問題に限るまい。3度目の緊急事態宣言に追い込まれたコロナ対策をはじめ、これまでの政権運営に対する総合評価の表れとみるべきだ。首相にはその謙虚さを求めたい。

 一方、共闘が功を奏し、3勝した野党も慢心は禁物だ。長野では、立憲の候補者と共産、社民の地元組織が結んだ政策協定に国民民主が反発し、推薦を一時白紙とする混乱があった。近づく衆院選に向け、選挙区での候補者の一本化と同時に、共通の公約づくりや政権の枠組みに対する考え方のすり合わせを急がねばならない。

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