(社説)東電新会長 古い体質一掃に全力を

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 東京電力ホールディングスの新会長に6月、前経済同友会代表幹事の小林喜光氏が就任することが決まった。いまだに社会の信頼を失ったままの東電を、今度こそ変えることができるのか。新会長の責務は重い。

 福島第一原発の事故を防ぐことができなかった反省から、東電は2012年、社外取締役による監督を強化した。それを代表する存在が会長だ。以降、企業経営の経験者や企業再建の専門家ら3人が務めたが、企業体質の改革は実現しなかった。昨年からは空席が続く。

 福島第一原発の事故に伴う損害賠償や廃炉などの費用をまかなうため、東電にとって収益力の改善は急務だ。しかし、安全最優先を徹底できない企業体質を一掃しなければ、電力の安定供給もままならない。

 東電では、柏崎刈羽原発で外部からの侵入を検知できない状態が1カ月以上続いていたことなど、今年に入って不祥事の発覚が相次ぎ、組織のあり方そのものに疑念が向けられている。

 小林氏は政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構の運営委員として東電の再建計画策定に関わった。機構は東電の筆頭株主である。12~15年には社外取締役も務めた。東電が抱える問題はよく知っているはずだ。

 ところが先日の内定会見では、自らの最大の使命が信頼回復にあると認めつつ、具体的な行動については現経営陣と相談しながら進めると述べるにとどめた。そんな遠慮したような姿勢では、改革はおぼつかない。社外の常識を社内に浸透させるよう率先して行動するとともに、その進捗(しんちょく)状況を自ら社会に発信し続けねば、東電は存続さえ危うくなると、肝に銘じる必要がある。

 まず試されるのが、福島第一で生じた汚染水を処理した水をめぐる対応だ。政府が決めた海洋放出で風評被害が生じれば、「適切に対応する」と東電は繰り返している。しかし絶対反対を押し切られた漁業関係者らは、不信感を拭えないままだ。

 原発事故の被災者に対するこれまでの東電の向き合い方は、真摯(しんし)とは言い難いものがある。「最後の一人まで賠償貫徹」など、福島への「3つの誓い」を掲げているにもかかわらず、実際には、賠償をできるだけ少なく済まそうとするような動きが目に付く。被害者の立場を優先する姿勢を東電にもたらすことができるか。厳しい目が注がれ続けることを、小林氏は覚悟せねばならない。

 実質的な筆頭株主である政府も、復興や廃炉の責任を全うできる組織に東電が生まれ変わるよう、新会長を後押しする義務がある。

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