(社説)緊急事態延長 迷走生んだ甘い見通し

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 緊急事態宣言の今月31日までの延長が決まった。愛知、福岡が加わって対象は6都府県に。まん延防止等重点措置も5県で継続のうえ、新たに北海道、岐阜、三重に適用される。

 重症者の数は連日のように最多を更新し、中でも関西地区は深刻の度を深めている。一般医療に携わる者も含めて現場の負担を少しでも軽くし、救える命を確実に救うために、やむを得ない延長・拡大といえよう。

 そもそも大型連休を挟む17日間という当初の設定に、感染症の専門家からは、短すぎるし、施策の効果を見極めることもできないとの指摘が出ていた。だが政府は耳を傾けず、「短期集中」ともっともらしい看板を掲げた。甘い見通しとその破綻(はたん)は、政治への信頼をさらに傷つける結果となった。

 とりわけ休業や営業時間の短縮を求められた多くの事業者にすれば、短距離走だと言われて歯を食いしばって応じたのに、間際になってゴールを動かされたような思いだろう。丁寧な説明と手厚い支援が必要だ。

 まさかその「支援」のつもりではないだろうが、延長と抱き合わせる形で、休業要請などを一部緩和したことには疑問を拭えない。最終的には知事の判断になるが、アクセルとブレーキを同時に踏むようなことをすれば、どんなメッセージとなって伝わるか。Go To事業を巡る中途半端な対応が、傷を深くした過去を思い起こすべきだ。

 感染力の強い変異株への置き換わりが各地で進み、インドで流行する別の株も国内で見つかっている。不安は増すばかりなのに、菅首相は「人の流れは間違いなく減少している」と繰り返し、自らの政策の正当性をアピールする。責任回避にしか見えないその振る舞いが、首相の言葉が国民に届かない大きな原因になっていることに気づかないのだろうか。

 折に触れ「専門家の意見を聴いて」というが、「17日間」が示すように実を伴っていないのも問題だ。きのう政府の諮問を受けた専門家らからは、宣言を解除する基準を厳しくして、感染抑止に注力すべきだとの意見が相次いだ。耳の痛い提言にも謙虚に向き合わねば、この苦境を脱することはできまい。

 1年余に及ぶ自粛疲れ・宣言慣れというべき状況に、ワクチン接種が進まないストレスも加わって社会を閉塞(へいそく)感が覆う。

 目標をしっかり掲げ、そこに至る道筋を理由とともに説く。対話から逃げず、過ちや見立て違いがあれば素直に認め、原因を分析して次の対策に生かす。国民の協力が得られないと嘆くのではなく、得られるように力を尽くすのが政治の使命だ。

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