(社説)赤木ファイル 黒塗りで事実を隠すな

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 文書の存否すら明かさなかった不誠実な態度をようやく改め、開示に応じるというが、「黒塗り」で真相解明を阻むことがあってはならない。

 森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざんで、国が「赤木ファイル」の存在を認めた。改ざんに加担させられたことを苦に自死した元近畿財務局職員、赤木俊夫さんが、一連の経緯を記録したもので、妻の雅子さんが国などに損害賠償を請求している裁判で提出を求めていた。

 提訴から1年余り。俊夫さんの元上司がファイルの存在について語った音声データが裁判所に出されてからでも、半年が経過している。この間、財務省は、法廷では「争点とは関係ない」として、国会では「裁判に影響が出る」として、ファイルの公開要求に応じてこなかった。真実の隠蔽(いんぺい)を図ったとしかみえない態度に、改めて怒りを禁じ得ない。

 今回の開示表明は、あくまで裁判所に促されてのものだ。財務省はこれまでの後ろ向きな対応を猛省しなければならない。とりわけ、国会で拒否発言を重ねたトップの麻生財務相の責任は重い。

 懸念されるのは、内容がどこまで明らかにされるかである。

 国が示すとしたのは、俊夫さんが改ざんの経緯を時系列でまとめた資料と、財務省近畿財務局との間でやりとりされたメールなどだ。俊夫さんが受けた苦痛を判断する手がかりになるだけでなく、改ざんの動機や詳しい指揮命令の実態が明らかになる可能性がある。

 財務省は一部をマスキング処理、すなわち黒塗りをした上で開示する考えだ。国有地売却や文書改ざんに直接関係のない第三者らを守ることは必要だが、組織や職員に配慮した恣意(しい)的な判断は許されない。「夫に改ざんを促した人の名前はちゃんと出してほしい」という雅子さんの声に向き合うべきだ。

 森友問題では、事実と異なる国会での政府答弁が139回、確認されている。国と森友側とのやりとりの記録について、実際にはあるのに「不存在」として情報公開に応じなかった例も46件明らかになった。

 国民が共有すべき情報を公開しないばかりか、うその説明を重ねた政府、特に財務省の隠蔽体質は、民主主義の根幹を揺るがすものだ。

 安倍政権は、森友問題の調査を当事者である財務省に担わせ、解明が不十分なまま、関係者の処分で幕引きをした。菅政権もそれを引き継いでいる。赤木ファイルという新たな証拠を契機に、第三者による徹底調査に乗り出すべきだ。

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