(社説)施設での感染 診療所の役割をさらに

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 根本にあるのは、入院すべき患者が入院できないほどの病床の逼迫(ひっぱく)である。地域を支える診療所をはじめ、医療機関と自治体、国が協力して検査・診療態勢を強化し、病床を少しでも増やす具体策を急ぐべきだ。

 神戸市大阪府門真市の高齢者施設で4月、新型コロナクラスター(感染者集団)が発生し、計38人が亡くなった。神戸の介護老人保健施設では当時の入所者の2割近い25人が死亡。うち23人は施設内で療養中で「入院できなかった人が大部分」(市幹部)だったという。門真の有料老人ホームでは定員の3割近い13人が命を落とし、入院先が決まらないままの人が8人を占めた。

 高齢者施設での集団感染はたびたび生じている。新型コロナでも昨年、札幌市の施設で17人が亡くなった。お年寄りは感染すると重症化しやすく、認知症の人にはマスクの着用など対策を徹底しづらい。感染者の早期発見、病院での治療と入院が重要だと指摘されてきた。

 しかし、そのための態勢はいまも不十分なままだ。

 施設の入所者や職員に新型コロナワクチンが行き渡るには、なお時間を要する。病床不足対策で大阪府兵庫県への看護師派遣が進むが、短期間で事態を好転させるのは難しい。既に重症者が軽症・中等症病床にあふれる大阪府では、玉突き的に自宅での療養者が急増し、今月初めまでの4週間で5倍強の1万3千人余に達した。

 施設での検査や診療の強化に加え、ホテルでの宿泊療養者や自宅療養者も含め、入院できない人へのケアを充実させることが急務である。

 期待したいのは、規模は小さくても地域に根ざす診療所が、より多くの役割を担うことだ。

 往診を含めて積極的に患者に向き合うのはもちろん、医療が手薄な施設への支援など業務は少なくない。入院待ちが多い地域では、自治体からの連絡で医師が遠隔診療にあたったり、患者の自宅に赴いたりする仕組みが見られる。医師会と自治体が協力し、連携を広げてほしい。

 病床の積み増しは病院が中心になる。設備を改修しコロナ感染者を受け入れるほか、それが難しい場合は、ある程度回復し他人を感染させる恐れがなくなった人向けの病床を提供することも逼迫緩和につながる。そうした努力を財政面などで支えるのは国や自治体の役割だ。

 大阪では入院調整を担う府の幹部が「年齢が高い方は入院の優先順位を下げざるを得ない」と記したメールを保健所宛てに出し、撤回する騒ぎがあった。

 救える命を救う。そのために全力を尽くさねばならない。

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