(社説)日韓関係 首脳自ら事態の打開を

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 課題が難しいほど、政治指導者の決断と行動が必要になる。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領には、責任をもって現状を打開してもらいたい。

 文氏の任期が今月10日で、残り1年を切った。韓国の憲法では再選は認められていない。

 4年前を振り返れば、前大統領の罷免(ひめん)という異例の事態を受けての就任だった。

 南北に隔てられた分断国家における理念的な対立や、経済の急成長の副作用ともいえる社会格差の是正を目指すとしたが、結果として、いずれも悪化させている。

 そんな国政運営から支持が離れ、レームダック(死に体)化が指摘される。

 だがそうであっても、文氏には避けられない判断が残っている。日本との関係改善をいかに進めるか、である。

 過去の問題では被害者である韓国において、今もなお敏感な感情やしこりが残っている。

 他方、両国にはともに繁栄を分かち合ってきた半世紀以上の実績があり、政治の対立をも超える民間交流が存在する。

 日韓の関係改善は二国間の問題にとどまらない。文氏は来週訪米し、バイデン大統領との会談に臨むが、中国や北朝鮮との間合いをどうとるかは、地域の安定に直結する問題である。

 文氏はこれら全体的な流れをふまえた上で、大局的な見地からの行動を示すべきだ。

 日本政府に今求められるのは何よりも謙虚さではないか。

 安倍前政権は、慰安婦合意などをまとめたものの、その後に継続的な配慮を示す姿勢はとらず、歴史問題を経済分野にまで飛び火させた。

 植民地支配が少なくとも「不当」であったことは、日本政府も認めてきた事実である。負の歴史から目をそらすような態度では和解は望めないと、日本政府は悟らねばならない。

 先週は1年3カ月ぶりに外相同士が会談した。それも米国の強い要請を受けて実現したとされるが、意思疎通を続けていくことは確認したという。

 来月には英国で主要7カ国(G7)首脳会議が予定され、文氏も招かれている。この機会を生かし、日韓両首脳は、ひざ詰めで意見を交わしてみてはどうか。

 双方の実務者は、その実現に向けて、これまで以上に協議を加速させるべきだ。

 菅首相は朝鮮半島が支配から解放された敗戦までの歴史を、文氏は国交正常化以降の両国の互恵の歩みを、それぞれ静かに見すえて会談に臨んでほしい。

 次の世代に正常な隣国関係をつなぐ責任があることを、両首脳は忘れてはならない。

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